みなさん、こんにちは。Kumusta kayo?前回、フィリピン語で「家族」はmag-anak、そして「親戚」はkamag-anakと呼ぶと紹介しました。日本ではあまり親戚づきあいがない人も増えていると聞きますが、フィリピンでは親戚間のつきあいも大切にされる傾向があります。
少し前の世代では兄弟姉妹の数が10人前後のことも珍しくなかったので、親戚一同が集まると数十人になることもあります。最近は親戚の誰かが海外にいて、その人の帰国に合わせて親戚が集まるというのもフィリピンでは少なくありません。また、昔は生まれた土地で一生を過ごし、近所の人の多くはどこかでつながっている親戚や姻戚(いんせき)という場合も多かったことでしょう。今回は、そんな親戚や姻戚関係にある人を指す言葉を見ていきましょう。
配偶者 asawa
まず「配偶者」はasawaです。「きょうだい」を表すkapatidなどと同様にasawaに男女の区別はないので、この言葉は「妻」も「夫」も指します。配偶者の両親である義両親のことはbiyenanと言います。この言葉も男女の区別がないので、biyenan na babae と言えば義母、biyenan na lalakiと言えば義父を指します。
前回「子ども」を表すanakに男女の区別がないと書きましたが、「孫」を表すapoにも男女の区別がありません。さらに「ひ孫」になると apo sa tuhodと呼びます。これは直訳すれば「膝の孫」という意味です。なぜここで「膝」が出てくるのかはわかりませんが、「曾祖父」「曾祖母」も “lolo sa tuhod” “lola sa tuhod”と言います。先日84歳になった筆者の義母は「なぜ『膝』が付くのかはわからないが、ひ孫のいる年になると誰でも膝が痛くなるのは確実だ」と笑っていました。
また「おい」「めい」を指すpamangkinも男女の区別がありません。男女の区別をつけたい場合は義母、義父などと同様 に“~ na babae”(女の~) “~ na lalaki”(男の~)と付けて表します。
義理の兄弟・姉妹
さらに混乱しがちなのが義理の兄弟・姉妹やその配偶者に関する言葉です。義姉や義妹、つまり自分の配偶者の姉妹、または自分の兄弟の妻はhipagと言います。そして義兄や義弟、つまり自分の配偶者の兄弟、あるいは自分の姉または妹の夫のことはbayawと言います。
これまで出てきた言葉の多くは男女の区別がない言葉でしたが、こちらは男女の区別はあり、年齢の上下の区別がない言葉です。さらに自分の配偶者の兄弟姉妹の配偶者はbilasと言います。この言葉は男性にも女性にも使います。ここまで来ると、自分の場合に当てはめて具体的に想像しないとわかりにくいと思いますが、自分の夫、または妻の兄弟姉妹の配偶者がbilasにあたります。日本語だとbilasの場合も義兄や義妹と呼びますがフィリピン語では区別があるのです。
自分の子どもの配偶者(息子の妻や娘婿)のことはmanugangと呼びます。そして自分の子どもの配偶者の両親のことはbalaeと言います。これは日本語では「相親家(あいやけ)」と言うそうですが、現在ではほとんど使われない言葉ではないでしょうか。それに比べるとbalaeの方は頻度は低くても実際に使われている言葉です。
このように親戚に関する言葉も日本語との微妙なずれがあったりして、混乱しますが興味深いですね。皆さんも自分の親戚などを想像しながら、誰がbilasで誰がhipagにあたるのか、ぜひ考えてみてください。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大(現大阪大外国語学部)フィリピン語科卒。最近の楽しみは出張をより快適にするアイテムを集めること。Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia