フィリピンの貧困糖尿病の現状
世界に急増中の貧困糖尿病。フィリピンで可能な対策として、食品に含まれる糖質の吸収度を表す数値、グリセミック・インデックス( GI値)が低い食材の活用が挙げられます。
私はSTC国際クリニック・NPO日本国際医療奉仕会を設立し、ルソン島、セブ島、レイテ島、ミンダナオ島のバランガイや刑務所など約40カ所で内科と歯科のメディカル・ミッションを行ってきました。その度に、各地で糖尿病に効果が期待できるGI値の低い食材との出会いと発見があり、料理して住民の方と試食しました。それらのおすすめ料理を紹介します。
フィリピンで手に入るGI値が低い食材
➊キャッサバ芋のお好み焼き:キャッサバ芋の粉を水で練って、みじん切りにしたモリンガ、キャベツ、カンコン、ゆでたレンズ豆を混ぜ込み、フライパンに少量の油を敷いて、お好み焼き風に調理します。予算に応じて、卵や豚肉や鳥肉をトッピング。
➋モリンガのスープ : モリンガは奇跡の木とも呼ばれ、二酸化炭素を吸収するとともに、鉄分、カルシウム、ビタミン、タンパク質を豊富に含みます。フィリピンの地方では庭先などに植えられ、貧困地区でも入手しやすい食材です。スープにすることで消化によく、GI値も低いため糖尿病予防に役立ちます。
➌焼きバナナ : バナナをオーブントースターやフライパンで焼くと甘みが増してオリゴ糖に変化。食べると腸内の善玉細菌が増えます。便秘や血糖の上昇を予防し、更にシナモンを加えると効果がアップします。
➍ブコジュース(若いココナツのジュース): 天然の電解質が豊富で、水分補給に最適。砂糖を加えず、自然のまま飲むことで低GI値を保ちながら、体に栄養素を補給します。
GI値は100を最高とし、白米、パン、麺類、菓子、酒類が高いので取りすぎには注意が必要。GI値70以下の食材が理想です。インターネットで食材のGI値を確認し、食生活に役立ててください。フィリピンで手に入るお勧めの低GI値食材の例を左ページの表で紹介しますので、参考にしてください。
食後の運動習慣とその方法
フィリピンでは、運動不足が健康問題の一因となっています。暑い気候を理由に日常的な運動を避ける傾向があり、ちょっとした短い距離も歩かず、トライシクルやジプニーを利用します。一部の学校ではダンスや球技の授業が行われていますが、体育の授業や運動会といったイベントが少ないことも子どもの運動習慣の意識欠如の要因になっている可能性があります。
食後60分以内の筋トレは急激な血糖上昇(グルコーススパイクと呼び、糖尿病が増悪する因子と言われています)を予防する効果があります。いつでも、どこでも、簡単にできる筋トレメニューを紹介します。
➊スロースクワット: ゆっくりと5 〜10秒かけてしゃがみ、同じくゆっくり立ち上がる。約5分繰り返す。
➋壁押し運動: 壁に向かって、全身の力を込めて押し、約7秒キープ。少し休んで繰り返す。これを約5分行う。
➌椅子トレ: 椅子に座って、両足を50回上げる。休みを入れながら3セット、計150回行う。
➍ダンス、散歩、掃除など:食べたら、休む前に動く習慣をつけることが重要。
コミュニティーで正しい教育を
貧困→空腹→安い炭水化物(病態は高GI食材→糖尿病になりやすい)に依存する食生活からの脱却は容易ではないので、幼少期からの家庭や学校での教育が大切です。しかし、親が健康と食生活についての知識を持たず、肥満であれば子どもの糖尿病リスクはかなり高くなります。フィリピンでは定期的に体重測定を行う習慣がありません。バランガイの医療スタッフの人材不足対策が急務課題で、私たちが行うメディカル・ミッションはとても有意義であり、今後も各地で実践する予定です。また、貧困地区では歯周病や虫歯が蔓延しており、食後の歯みがき習慣の指導も急務なので、ドクターマジックの歯ブラシを提供しています。
フィリピンは楽しいイベントが大好きな国で、私が医師になって趣味で始めたマジック(日本奇術協会賛助会員 : 芸名 Dr.Magic)を活用することで、年齢を問わず多くの方々との交流を深めることができました。今後もエンターテインメント型教育を実践していきます。フィリピンでは今のうちに、貧困糖尿病対策が必要です。我々の活動も、マニラ新空港建設中のブラカン地区を中心に、またオンライン診療などを活用し、更なる無料医療支援のスケールアップを目指していきます。
伊藤実喜 Dr. Miyoshi Ito
医師・医学博士
東京上野マイホームクリニック院長。STCメディカル国際クリニック(マニラ市マラテ)理事。AMIRI免疫研究所(大阪)理事。Cell Lead International (大阪)専属医師デ・オカンポ医大(De Ocampo Memorial College) 客員教授。1951年福岡県小郡市生まれ。福岡大学医学部大学院博士課程修了。レイテ島での医療ボランティアをきっかけに、フィリピン各地の貧困地区や刑務所などで「ドクターマジック」として手品ショーを取り入れた医療奉仕活動を行っている。1993年第60回奇術世界大会(カナダ・バンクーバー)優勝。
所属学会:日本臨床内科医会、日本糖尿病学会(生活指導医)、日本再生医療学会(厚労省再生医療第2種3種取得医))、日本温泉学会(温泉療法専門医)、日本旅行医学会(認定医)、日本性機能学会、日本奇術協会(芸名 Dr. Magic)、NPO日本フィリピン夢の架け橋代表