若返りをめざすオリンピック
今、世界の億万長者が立ち上げたXPRIZE財団によって「2030年までに10年若返ることができる治療法を開発したら、賞金1億ドル(約150億円)」を掲げた若返り(Rejuveation)オリンピックが行われています。58カ国600チームがエントリーし、今年の7月の時点で40チームが選抜され、そのうち8チームは日本からのチーム。今回は、その若返り治療についての最新情報をお届けします。
老化細胞=ゾンビ細胞?
細胞は、染色体の遺伝子(DNA)の影響で常に細胞分裂で生命を維持します。染色体の末端を保護するテロメアや遺伝子が変化したり栄養不良で細胞分裂不能となったりして、役立たずとなった老化細胞は、まるでゾンビのように死なずに周りの細胞に多大な迷惑をかけます。有害な炎症物質を放出し、糖尿病、動脈硬化、がん細胞なども発育させ、寿命を左右するのです。スペインのカルロス医師は、遺伝子レベルの基本的ダメージ(①〜⑤)、ダメージの予防(⑥〜⑧)、統合的治療(⑨〜⑫)からなる12の老化予防因子を2023年に発表し、世界的な注目を集めました。
ゾンビ細胞を減らす12の因子
Primary 防衛センサー遺伝子のダメージ5項目
① 遺伝的不安定、 DNAのキズ
② 染色体テロメアの短縮、細胞分裂停止
③ 生活環境(食事、ストレス、喫煙など)の変化によるDNAの変化。五感(見る、聞く、香り、味わう、触れ合う)の刺激が老化を予防。湯治(風呂に浸かり、少し冷水を浴びる習慣)は重要。
④ タンパク質変性によるDNA栄養低下
⑤ オートファジー(古い細胞を食べて再利用する)機能の低下と細胞に溜まったゴミの蓄積。細胞活性化の方法として、前日の夕食から16時間の簡易断食(ファスティング)がある。朝食は味噌汁や軽めのスープやヨーグルトのみとし、空腸(胃で消化された食物が送られる小腸の一部) を休ませる。朝9時〜正午の3時間はゴールデンタイムと呼ばれる。また、細胞活性化に役立つとして、フィリピンでおなじみの90以上の栄養素が含まれる奇跡の植物・モリンガや日本の和食も国際的に注目されている。
Antagonist 遺伝子ダメージの予防3項目
⑥ 栄養代謝障害、 細胞の栄養失調
⑦ ミトコンドリアの機能低下:細胞の発電所でエネルギー低下。ミトコンドリア活性化の方法として、HIIT(High-Intensity Interval Training) 高強度インターバルトレーニングを行う。
短時間全身運動(20〜30秒)後に休息(10〜30秒)し、トータル5〜6分。脂肪燃焼、ミトコンドリア発電、オートファジー活性、抗炎症、神経保護などの効能も期待される。
⑧ 細胞老化、死滅細胞の悪影響 :分裂能力を失った細胞(老化関連分泌物)が組織の機能低下を促進させる 。その対策となる老化細胞除去剤として、セノリティクスや抗癌剤のオプジーポ、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬が研究が進められている。
Integrative 統合的治療法4項目
再生医療の有効性を示すデータが続々と発表されている。
⑨ 幹細胞の枯渇 :再生能力を失った幹細胞の減少が組織の修復力を低下させる。 日本はiPS細胞の研究でノーベル医学賞を受賞した山中伸弥教授の功績により、世界トップの再生医療の先進国であり、大阪万博でも紹介された。傷んだ細胞を修復再生(ホーミング効果)し、人生をリセットすることが可能になることから、 外国からも医療ツーリズムを目的に来日されている。
⑩ 細胞間コミュニケーションの低下:特に羊膜(胎児を包んでいる膜)幹細胞のエクソソームの低下が遺伝情報mRNA(2024年ノーベル医学賞受賞した研究成果)の機能を低下させて、病気の治療連携が上手く作動せずに老化を促進させるといわれる。
⑪ 慢性炎症 :炎症因子が老化を促進させ、CRPの項目でチェック可能
⑫ 腸内細菌の変化:腸内細菌との共存が老化を左右

(法寿会記念クリニック)
以上を要約すると、
❶ 食べ過ぎず、プチ断食をして腸を休ませ、腸内細菌を活性化
❷ モリンガや和食、茶をとり、筋トレでオートファジー機能を高める
❸ 風呂の湯治作用や癒しの五感を活用
❹ NMN鼻腔吸入療法を活用。自然界のミネラルを遺伝子に届けるフルボ酸とビタミンB3の1つである成分NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を活用し、鼻腔吸入で直接脳や全身に作用する画期的な治療法が注目されている。
❺ ホーミング効果の幹細胞やエクソソーム(細胞から生まれる小胞)を活用。
以上を参考に、健康長寿をゲットしてください!
伊藤実喜 Dr. Miyoshi Ito
医師・医学博士
東京上野マイホームクリニック院長。STCメディカル国際クリニック(マニラ市マラテ)理事。AMIRI免疫研究所(大阪)理事。Cell Lead International (大阪)専属医師デ・オカンポ医大(De Ocampo Memorial College) 客員教授。1951年福岡県小郡市生まれ。福岡大学医学部大学院博士課程修了。レイテ島での医療ボランティアをきっかけに、フィリピン各地の貧困地区や刑務所などで「ドクターマジック」として手品ショーを取り入れた医療奉仕活動を行っている。1993年第60回奇術世界大会(カナダ・バンクーバー)優勝。
所属学会:日本臨床内科医会、日本糖尿病学会(生活指導医)、日本再生医療学会(厚労省再生医療第2種3種取得医))、日本温泉学会(温泉療法専門医)、日本旅行医学会(認定医)、日本性機能学会、日本メンズ医学会(認定医)、日本奇術協会(芸名 Dr. Magic)、NPO日本フィリピン夢の架け橋代表