バギオ市で毎年2月に開催されているフラワー・フェスティバルは、「花盛りの季節」という意味のカンカナイ語「PANAGBENGA」と呼ばれ親しまれています。

 

 この「パナグベンガ」が始まったいきさつのひとつには、1990年のルソン大地震からの復興も意図されていて、1995年から毎年実施されてきました。コロナ禍中の2020年から2022年までの3年間は実質的に中止となり、2022年は会場や内容を縮小して実施されました。そのため、パナグベンガの最大の呼び物である2日間にわたるパレードが行われたのは実に4年ぶりです。

 

 

バギオ市のフロート

 

 

 私はバギオに2005年に移住し、2006年に初めてパナグベンガを見ました。その後、2013年からは若いコスプレイヤーに誘われて、在バギオの日本人や留学生などに声を掛け、パレードに参加するようになりました。2017年には北ルソン日本人会の有志が奮起し、「新選組」のパフォーマンスをしたのもいい思い出です。

 

 今年のパナグベンガは、コロナ前の通常通りのフルパワーで、2月1日からさまざまなイベントが市内各所で開かれました。2月の最終土曜日にグランド・ストリートダンス・パレード、最終日曜日にはグランド・フロート(花車/はなぐるま)・パレードが華々しく行われ、その後1週間続くセッションロード・イン・ブルームでは、目抜き通りのセッション通りが各種の店のテントが並ぶ歩行者天国となってにぎわいました。

 

 

2017年のパナグベンガで「新選組」としてパレードに参加(中央の黄色い羽織りが筆者)。

 

 

 

すばらしい掛け声

 

 

 グランド・ストリートダンス・パレードは、「伝統舞踊」「フェスティバル・ダンス」「小学生によるドラムなどのマーチングバンド」の3つの部門があって、バギオ市内の小学校と中高校生、そして大学のダンスチームが参加し、華やかさと独創性を競いました。 

 

 特に印象的だったのは、ルソン島北部の山岳民族の音楽とダンス。素朴な楽器と人の掛け声だけというのがすばらしかったです。ドラムは確かに迫力満点なのですが、人のパワーが重なり合った掛け声を生で聞くと、感動すらおぼえました。

 

 

フェスティバル・ダンス部門。掛け声が感動的で、人間のパワーを感じることができた。

 

 グランド・フロート・パレードには、主にバギオ内外の企業や政府系機関などが参加します。1年前から花の栽培農家と契約して準備し、手の込んだ大きな花車になると日本円にして数百万円もかかるとのことです。この豪華な花車をまとめて1カ所で見ることができるのはパレードの1日だけという贅沢このうえないものです。

 

 

子どもの歓声で迎えられたおなじみジョリビーの花車。

 

 

 

祭りの迫力を現地で

 

 

 フィリピンはもとより、海外でも知られているパナグベンガは、観光都市バギオの最大の祭りです。開催期間中、バギオ市内のホテルは予約でいっぱいになり、市の中心部やショッピングモールは観光客であふれ、都市機能はほぼマヒ状態。なので、地元民はこの時期はバギオの中心部に近寄りません。

 

 皆さんにも祭りのその迫力をライブで見て満喫していただきたいのですが、まずは混雑を乗り切る周到な準備が必要です。ホテルはパレードのルートにあるところをお勧めします。混雑をかいくぐる勇気と体力のある方は、朝5時から場所取りをして、8時スタートで2時間ほどかかるパレードを辛抱強く待ちましょう。日本ではなかなか見ることが少なくなった炸裂する祭りのエネルギーを、ぜひバギオで体験してください。

 

 

グランド・フロート・カテゴリーで1位となったTIEZA(観光インフラ企業経済区庁)の花車。賞金50万ペソを獲得した。

 

 

 

小国 秀宣(おぐに ひでのぶ) 

北ルソン日本人会代表。長崎県出身。米系半導体企業のフィリピン法人に駐在員として勤務後、2005年からバギオ市在住。コロナ禍で2020年から3年間は埼玉県に一時帰国していたが,2023年2月にバギオ市に戻った。