バギオのメインストリートであるセッションロードは、毎週日曜日に歩行者天国となり、さまざまな屋台や路上パフォーマーで溢れる。10月第1日曜日には今年で2回目となる「カントリーフェア」が開かれ、いつもより輪をかけて朝から大変な盛り上がりを見せた。

 

ファッションショーにてランウェイを颯爽と歩く女性。ミスター&ミス・カントリーフェアの称号をかけて多くの若い男女が参加した。

 

 

 カントリーフェアでは名前の通り、西部劇でよく見るカウボーイハットに茶色のベスト、首には赤いバンダナ、さらにジーンズに革靴と、まさにカウボーイさながらの衣装を身にまとった人たち、さらにウエスタン調の鞍をつけた馬やポニーがそこかしこを歩く。いつもとは違う雰囲気のセッションロードが出現した。

 

バギオ名物の一つともいえる馬とポニーはこの日も大活躍。多くの観光客の視線を浴びても全く動じない。

メインイベントのラインダンス

 

 

 中でも注目を集めていたのがラインダンス・コンテストである。ダンサーが縦横にラインを作って並び、そのラインを崩さず、カントリーミュージックに合わせて同じステップを踏んで踊る。今回は大人部門と、学生部門の2つに分かれて行われ、計8チームが出場した。各チームそれぞれの音楽や衣装、振り付けを披露し、観客を大いに沸かせた。

 

この日一番の盛り上がりを見せたラインダンス・コンテスト。カウボーイの衣装にはバギオ伝統の模様も刺繍されていた。

 

 

 大人部門に出場したカバリエロ・ガーディアンズ・ブラザーフッド(Kabalyero Guardians Brotherhood)は、2019年の第1回のコンテストでチャンピオンに輝いたグループ。普段は街の清掃、「ブリガダ・エスクウェラ(brigada eskwela)」といわれる公立学校の授業準備や清掃などをサポートするボランティアなど、様々な活動を行っているそうだ。今回は10名のメンバーが参加し、『Country as a Boy』という曲で4分間のパフォーマンスを披露した。練習は週に2〜3回、放課後や仕事帰りに行い、振付師はいないためオンラインでラインダンスを見ながら習得したという。メンバーの1人、アンジェラ・アズーロさんは、「ラインダンスを踊るのは楽しく、いい運動になります。子どもの頃を思い出して仲間との絆を深め、近所の人たちと楽しく過ごすきっかけにもなるんです」と笑顔で話してくれた。

 

 

 学生部門のラ・トリニダード・サンホセ小学部では、フローレンス・シソン校長がチームの指導役としてダンスのコンセプトとステップの創作をサポートしてきた。「コンテストに参加した主な目的は、児童が楽しみながら、文化を体験し、新しい知識を得るため。そして人前に出る経験を積むことです。今回が初出場ですが、ダンスの上手い下手は二の次。まずは挑戦することで、子どもたちが自信を育むことにつながると信じています」

 

 

なぜバギオでカウボーイ?

 

 

 

 そもそも「country(カントリー)」とは、「田舎」や「田園」を意味する言葉であり、米国のヨーロッパ系移民の伝統的なファッションや音楽、文化の総称である。それがなぜバギオで「カントリー」なのか。今回のイベント主催者の1人であり、普段はバギオの街中にあるショッピングモール「PORTA VAGA」のマネージャーを務めるジェニー・ベロさんに聞いた。

 

 

 「フィリピンは米国やスペインの植民地だった時代があり、バギオにもその歴史の影響が今もなお多くの分野で残っています。このカウボーイ文化もその一つ。我々はいったい何者なのか。バギオに根差し、人々に愛されるカントリー文化もまた我々の文化と言っていいのではないか? そんな思いからバギオ市政府と一緒にこのイベントを立ち上げました」

 

快く取材に応じてくれた「カントリーフェア」主催者のジェニー・ベロさん。

 

 もともと歌ったり踊ったり、音楽が大好きなバギオという街にとって、カントリー文化を音楽やダンス、コスチュームを通じて伝えていくのは自然なことと言えるかもしれない。今回はパンデミック後に復活してから初のイベントとあって、陽が沈んだあとも大盛り上がりのうちに幕を閉じた。子どもから年配の方まで誰もが踊ることのできるラインダンス。あなたも1曲いかがだろうか。

 

 

取材・文 原田 亮 サイバーエージェント→外資金融→学習塾運営。海外の大学院で教育を学ぶために現在、英語を勉強中。2022年3月〜バギオ留学。1カ月で帰国の予定が、バギオの魅力に魅せられ長期滞在(予定)。コーディリエラ・グリーン・ネットワークでボランティア中。