バギオ市の環境NGOコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)でのインターンシップの一環として、5月中旬、マウンテン州タジャンへ植林プロジェクトのモニタリングに行きました。

 

タジャンのコーヒー農家にインタビューをしている様子。

 

 

 

    今回のモニタリングでは、18軒のコーヒー農家を訪問し、コーヒーの苗木の育成や、手入れがしっかり行われているかなどを視察し、CGNのフォレスター(森林管理専門官の国家資格)の専門家が、改善点を指導しました。そして、私は農家が抱える課題について、聞き取り調査を行いました。

 

労苦から生まれるコーヒー

 

 コーヒー農家にインタビューしてわかったことは、コーヒー栽培はとても手間がかかるということです。

 

 まず農地に無数に生える雑草を家族で、あるいは人を雇って取り除くことから始まり、今にも滑り落ちそうな急勾配な森の中を重いコーヒーの苗木を肩に背負って運びます。栽培地の広さによって、植える苗木は90本~1000本。そして乾季には週2日は川から汲んできた水を山まで自力で運んで、コーヒーの木1本1本に水をやります。そのために川から山まで何百往復もしなくてはなりません。さらに、コーヒーの木の周りに生えた雑草を手作業で除草する作業もあります。コーヒーの木を植えてから約3年後にコーヒーチェリーが実り、手摘みで収穫した後にも、果皮の除去→発酵→洗浄→乾燥→脱穀→欠点豆の選別といった多くの工程が待っています。これらを経て、ようやく販売する生豆の状態になるのです。

現在CGNのプロジェクトによって栽培されているコーヒーの木。今年初めて実をつけたコーヒーの木は2年前に植えられた。

 

 コーディリエラ山岳地方では、ほとんどの農家がこの工程を全て手作業で行っており、あまりに過酷な重労働のためコーヒー栽培を諦めてしまう農家もいます。今年初収穫を迎えるタジャンのある農家は、「コーヒーチェリーを収穫後、どのように加工すればいいかわからない」「そもそも自分の育てたコーヒーを誰か買ってくれるのか」などと不安を抱いていました。

 

アグロフォレストリーによるコーヒーは森林の中で栽培されている。

 

 

エシカルなコーヒーとは?

 

 

 今回のモニタリングで、環境を保全する生産方法、かつコーヒー農家が栽培を継続できるシステムを通じて調達された「エシカルなコーヒー」が必要だと考えさせられました。エシカル(Ethical)とは、日本語に直訳すると「倫理的な」という意味です。

 

 

 私が考えるエシカルなコーヒーとは、環境面と経済面に配慮されたコーヒーです。次の世代に豊かな自然を受け継ぐために持続可能な方法で環境に配慮して作られたコーヒーであること。経済的に弱い立場のコーヒー農家から、労働価値に見合った価格でコーヒー豆を調達すること。これらを実現することで、農家は経済的に豊かになり、森林を破壊してまで農作物を作る必要がなく、子どもの教育に投資するなど、先住民の生活水準を向上させることができます。

 

最後は一粒ずつ欠点豆を選別してから生豆として販売(写真はトゥブライの農家)

 

 

 環境面、経済面から現在のコーヒー農家が置かれている状況を抜本的に解決することができれば、生産者から卸売業者、コーヒーを楽しむ消費者にいたるまで、コーヒーに関わる全ての人が幸せになるコーヒーを作ることができると思います。

 

 

 皆さんが日頃、飲まれているコーヒーには、農家が汗水を流して作った裏側のストーリーがあります。安いコーヒーは、農家をはじめ、誰かが経済的に犠牲になったり、大量生産するために森林が破壊されたりして調達されたコーヒーかもしれません。安ければ良いとは限りません。エシカルなコーヒーこそ重要だと思います。皆さんにとってのエシカルとは何でしょうか?

 

 

[筆者]

古瀬 貴一 環境NGOコーディリエラ・グリーン・ネットワークインターン。

文部科学省主催「トビタテ !留学JAPAN」日本代表プログラム14期生。

 

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環境 NGOコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network / CGN):

山岳地方の先住民が育てた森林農法によるコーヒーのフェアトレードを行う社会的企業。

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