by: 蝶谷 正明(セブ日本人会)

 

 

 子どもの頃から、本がなくてはいられない人間です。セブに移住してきた14年前の2007年、その時もやはり本屋のことが気になりました。英語の本を読むような能力はありませんが、本屋で書物を取ると、紙とインク、かすかにほこりっぽいにおいに気持ちが落ち着きます。

 

 マンゴーアベニューに2階建ての大型書店ナショナルブックストアを見つけた時の感動、そして一歩店内に足を踏み入れた瞬間の失望。その落差といったら。広い売り場で文房具などに押しやられるように、片隅で肩を寄せ合っている書棚。そこには海外で出版されたコンピューターや経済、外国語といった実用書ばかりが目につきました。

ロアの片隅に押しやられた書籍売り場

 セブの暮らしに慣れてくると、こじんまりとして、しかし本がいっぱいに詰まった店 を2、3軒見つけました。建築、ミリタリー、歴史関連の本がそろった店、ソファーや椅子が置いてあり「買わなくても良いから、ゆっくりしていってほしい」という店主の気持ちが伝わってくるサロンのような店もありました。それらの店も1つ消え、2つ消え、代わってマニラの書店Fully BookedやPowerbooksが登場しました。 しかし、いつの間にか前者は売場面積が半分以下になり、後者は閉店。モール内のナショナルブックストアでも書籍売り場は縮小し、かつて建築や芸術、ホビー関連の写真集、料理本、旅行ガイドブックなどが並んでいた影もありません。

 

 本屋がこんな有様なので、最近本を買うのはもっぱらアマゾン。本屋が好きな者としては、ちょっと残念な今のセブの本屋事情です。