蝶谷 正明(セブ日本人会)

 

 

 セブと言えばビーチリゾート、コバルトブルーの海、ホワイトサンドのビーチ、緑の葉のそよぐ椰子の木というのが、ステレオタイプです。しかし、コロナ禍が始まる少し前から、新しいリゾートが出現しました。

 

 セブ島は標高数百メートルの丘陵地帯。メトロセブを除けば、灌木と草地が延々と続く荒地です。その丘陵地帯では気温は朝夕、20度前後にまで下がります。東にはマクタン島、ボホール島、西にネグロス島を望み、草原を吹き渡る風は爽やか。しかもほとんど人が住んでいないので、交通渋滞や汚染された空気とは無縁です。

 

 

セブの丘陵地帯にあるウッドデッキ展望台から望む自然と海

 

 

 セブは数年前からオートバイでのツーリングとサイクリングが大変なブーム。しかし、渋滞がひどく排気ガスにまみれた市街地や、バスやトラックがビュンビュン飛ばす海沿いの道路は敬遠されます。そしてライダーとサイクリストが目指したのが、丘陵地帯なのです。

 

 

 中心部から30分ほど登れば、整備され、適度のアップダウンがある道路が島の反対側まで続きます。以前は丘陵地帯を訪れると、のどが渇いてもお腹が空いてもひと休みできる施設はありませんでした。それが、最初は軽食と飲み物を提供する程度から始まったのでしょうが、今は本格的なレストランがあり、花畑、ドッグラン、プールが整備され、宿泊施設まであります。外国人観光客用の高級ビーチリゾートは巨額な資本と高度な運営ノウハウが必要ですが、現状、この山のリゾートはお金持ちのファミリーが手作りのサービスで趣味的に経営しているような感じです。

 

 

 1軒がうまくいっているように見えると、次から次へと参入、開業していきます。山のリゾートのターゲットは、セブの中流以上の階層です。休日は海またはショッピングモールへ行くしか選択肢がなかったことを思えば、セブに大きな変化が起こりつつあります。