みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 日本では友達に「友よ!」とか「兄弟!」なんて呼びかけることはアニメか漫画でしか見かけないように思いますが、フィリピンでは友達や仲間に対してこれに近い表現を使うことがよくあります。

 

 

 

Pare/Pre (パーレ、プレ)

 

 中年以上の男性がよく使うのがこの表現です。自分の子供の名付け親・後見人Ninon(ニノン)になってもらうほど信頼できる友人のことをスペイン語でcompadreと言いますが、それがフィリピン語のkumpareになり、さらに縮まってpareとなり、最近はpreと表現されるようになりました。英語でもbrotherを短くしたbro(ブロ)が同じように使われます。都市部の中流層以上の若い人の間ではpreよりもbroの方がよく使われる傾向があります。

 

 

 

Mare/Sis(マーレ、シス)

 

 男性のpareやpreに相当するのが女性のMareです。こちらも本来は子供の後見人Ninan(ニナン)になってもらっている女友達をスペイン語でcomadreと呼ぶのが縮まりmareになったものです。こちらも英語ではsisterを省略してsisを使う傾向があります。

 

 

 

Bespren(ベスプレン)

 

 英語のbest friendが省略された表現です。Fは、元来フィリピン諸語にはなかった音なのでpによく置き換えられ、またbestとfriendの最後の子音が脱落してbesprenになったのです。これがさらに省略されbes/besh/beshie等が使われることもあります。最近は自分が推すアイドルのことをbesprenと呼ぶこともあるようです。たとえば “Birthday ng bespren ko ngayon!”(今日は私の「親友」の誕生日!)等と書いて、好きなK-popアイドルの写真を貼ったSNSへの投稿などを見かけます。また「親友」のはずのbesprenが、時に皮肉として「嫌いな相手」に対して使われることがあります。“Hoy, nand’yan na ang bespren mo!”(ほら、あなたの「親友」が来たわよ!)この場合「親友」ではなく、「敵」が来たのを告げているのですが、話している二人の間では誰のことか暗黙の了解があるのです。

 

 

 

 

 

Kaibigan(カイビーガン)

 

 こうしてみると、「友達」というフィリピン語はないのかと疑問に思う方もいるかもしれません。フィリピン語で「友達」はkaibiganといいます。「カイビーガン」のようにビーのところを伸ばして発音すると「友達」という言葉になりますが「カ・イビガン」のように後半を早く言うと「愛し合っている相手=恋人」という意味になります。これは語根であるibigに「友愛」と「恋愛」のどちらの意味もあるためです。

 

 

 

Kapatid/Kababayan(カパティッド、カババヤン)

 

 またkaibiganよりも親しい関係を表すのにkapatid(カパティッド)(兄弟)が使われることもあります。kapatidの語根patidは「断ち切る」という意味ですが、これが「兄弟」を表すのは、元はへその緒から同じ母親につながっていたものを断ち切られた仲だからというのが由来だそうです。それを血のつながりのない友への呼びかけに使うことで親密さを表しています。

 

 

 

 また「同じ国の出身者」という意味でkababayan(カババヤン)という呼びかけも使われます。国歌斉唱の前に “Mga kababayan, awitin natin ang Pambansang Awit”(同胞の皆さん、国歌斉唱しましょう)と呼びかけられるのを聞いたことがあるのではないでしょうか。言葉は短く省略され使いやすい物が多用されるようになる傾向がありますが、正式な場では、たとえ長くても “Mga kapatid,…” “Mga kababayan,…”と呼びかけるとぐっと引き締まるのは不思議なものです。ただし日本人がフィリピン人に対して呼びかける時は「同じ国の人」という意味のkababayanは使えないので注意が必要ですね。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia