みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 前回はフィリピン語にはさまざまな小辞があり、小辞を付けることで文にニュアンスを加えることができることを紹介しました。そして、小辞の中でも最も訳しにくいものの一つが 、“nga”です。ngaの発音は日本語で言えば鼻濁音の「が」と同じです。一般的にngaは「強調」を意味すると考えられますが、他の言葉と組み合わせると、少し意味が変わってきます。

 

 

1. Oo nga!

 “Oo” は「はい」のように同意する時に使う表現ですが、ngaと組み合わせることで同意が強調されて「そうだ!」「確かにその通り!」というような意味になります。
 同じ意味の表現に “Siya nga!” があります。これも「その通り」という意味です。ところが、ここに驚きを表す小辞palaが付くと、意味が変わって “Oo nga pala!” “Siya nga pala!” はどちらも「そういえば」という意味になります。会話の中で他の話題を切り出す時に使う表現です。

 

 

2. Di nga!

 “Di”は “oo”の反対語 “hindi”(いいえ)の省略形です。でも「その通り!」の反対の意味なら「まったく違う」になるのかと言えばそうではなく、「まさか!」「そんなはずはない!」という意味になります。

 

 

3. Basahin mo nga!

 “Basahin mo” は「読みなさい」という意味ですが、ここにngaを付けて “Basahin mo nga” と言うと「読みなさいったら」のように命令が強調されます。つまり、既に指示したことをもう一度繰り返して指示する時などに使われる表現です。使いすぎると怒っているような、あるいは少し押しつけがましい印象も与えるので、ngaの使い過ぎには注意が必要です。

 

 

4. Buti nga! / Buti nga sa iyo!

 “buti” は「良い」という意味なので、ngaをつけたら「良い」が強調されて「あなたにとって大変良いことだ」という意味になりそうですよね。しかし、これは嫌味や皮肉に使われる表現で「いい気味だ」「ざまあみろ」という意味になります。

 

 

5. Sabi ko na nga ba!

 “Sabi ko” は「私は言った」、naは、前回取り上げた小辞で「既に」、baは疑問を示す小辞です。なのでngaを「確かに」と訳して直訳すれば「私が既に確かに言ったじゃないか」つまり「私が言った通りじゃないか」または「ほら見ろ、やっぱりやると思った!」という意味になります。

 

 

 

6. Sige na nga!

 こちらもよく使う表現で “sige”は「OK」という意味で、naは「既に」ですから「既にOK」にngaが付いているんですね。この場合ngaで別に強調されているわけではなく、あんまりしつこく頼まれるので気は進まないけど「しょうがないなぁ、やってあげよう」というような意味になります。
 これらの例から、ngaというのは、単に言いたいことを強調するだけではなく、そこになんらかの心の動きがあることを表現する小辞だと考えられます。

 

 ngaに限らず小辞を使った表現は、直訳してもわかりにくいものが多くあります。これらは意味を分析して理解するより、使われるコンテクストや雰囲気から感じ取る方が適しています。ちょうど日本語でも終助詞の「ね」や「よ」、「よね」などで文章のニュアンスが一変してしまうのと似ていますね。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia