みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピン語と日本語はどちらも基本的に母音がa,e,i,o,uの5つなので、響きのよく似た言葉が多くあります。

 

 
 例えば、フィリピン語のmanga(マンガ)は日本語の「漫画」と同じ音ですが、意味は「マンゴー」。また日本語の「嘘」と同じ音のフィリピン語のuso(ウソ)は「流行」という意味です。 “Uso ang online workouts” (オンラインワークアウトが流行っている)のように使われます。

 

 
 今回はフィリピン語なのに日本語に聞こえる、または日本語なのにフィリピン語に聞こえる言葉を紹介します。

 

 

 

anoと「あの」

 

 日本語とフィリピン語で同じ音の言葉としてまず挙げられるのが「あの」と「アノ(ano)」。フィリピン語の「アノ」は本来は「何」という意味で、例えば「これは何ですか?」は”Ano ito?”と聞いたり、語尾につけて “Mainit, ano?”(暑いね)のように相手と認識が同じであることを軽く確認したりするときに使います。また、日本語の間投詞「えーと」のように次に話す言葉を考えている時などにも “Tapos ano,~”(それから、えっと~)、 “Ano kasi ang ano”(だってあれがあれだから)のように会話の中で無意識に発するフィラーとして使ったり、物の名前が出てこない時に使う「あれ」のように “Paki-abot ng ano.”(あれを取って)といった使い方があります。

 

 

 

イタイとイナイ

 

 フィリピン語でイタイ(Itay)はお父さんのこと。「痛い」や「居たい」ではありません。「タータイ(Tatay)」とか、呼びかける時は「タイ(Tay)」という言い方もあります。父親を「アマ(Ama)」と呼ぶ地域や家庭もあります。そしてお母さんはイナイ(Inay)。「居ない」ではありません。「ナーナイ(Nanay)」「ナイ(Nay)」あるいは「イナ(Ina)」とも呼びます。お姉さんは「アテ(Ate)」です。「イタい父親とイナい母親、アテになるのはお姉さんだけ」と覚えれば覚えやすいかもしれません。

 

 では、フィリピン人には日本語がどう聞こえているかと言うと、「弟」はフィリピン人には「ウト・ウト(utu-uto)」と聞こえるそうです。「ウト・ウト」は言いつけ通りにに盲従すること。そして日本語の「お父さん」もフィリピン人には「ウトゥサン(utusan)」に聞こえると言います。ウトゥサンとは「言いつけられる人」「召使い」のことです。

 

 

 

bakaとバカ

 

 筆者とフィリピン人の夫が結婚したばかりの頃、”baka?” “baka?”と言い合ってっていたら、実家の母に「バカ?」と怪訝な顔をされました。”baka”というのはフィリピン語で「たぶん」「そうかも」という意味ですが、抑揚は違っても日本語の「馬鹿」と同じ音なので日本語のバカと思ってしまいますね。(baka )と語尾が上がると「たぶん」という意味の言葉ですが、( baka)と語尾が下がるとスペイン語のvacaから来た「牛」という意味です。 「ニラガン・バカ」(nilagang baka=牛肉を煮込んだスープ)や「ギニサン・バカ」(ginisang baka=牛肉の炒め物)などの料理があります。

 

 

 

 

 フィリピン語で 「炒める」を表すgisaやginisaには「油が染み出すまで長時間炒めるが如く問い詰める」という暗喩を込めた表現もあるので、「バカ(牛肉)」を「イタメて」食べると、フィリピン語を知っている日本人ならクスっと笑えるストレス解消法になりそうです。さらに、日本人はよく「あ、そうか」と相槌をうちますが、これはフィリピン人には”aso ka”(アソ・カ)と聞こえます。asoは「犬」、kaは「あなた」なので「あなたは犬だ」と言っているように聞こえるのです。

 

 

 

Saka naと魚

 

 フィリピン語の “saka na”(サカ・ナ)は日本語の「魚」に聞こえます。意味は「またにしよう」。何かを今ではなく、またそのうちやりましょう、また今度にしよう、という時に使います。フィリピン語で「魚」は「イスダ(isda)」。我が家では”Saka na ang isda” 「魚はサカ・ナ(また今度にしよう)」なんて冗談を言っています。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia