みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 今年の2月、広域強盗事件に関与した疑いのある日本人がフィリピンから送還、逮捕されました。以前もフィリピンで特殊詐欺に関わっていたとされる日本人が逮捕されたことがありますが、今回はフィリピン国内でよく聞く詐欺や犯罪について見ていきましょう。
Budol-budol (偽金詐欺)
フィリピンでは特殊詐欺を行う組織のことはbudol-budol gang(ブドル・ブドル・ギャング)と呼ばれます。budolは英語のboodle(偽金)に由来し「ちょっと大金を預かってくれないか」とか「一緒に事業をやらないか」などと声をかけ、バッグの中の札束を見せてから担保として宝石や携帯電話を取るそうです。そして、ふと気づいて預かったバッグを開けてみると中身は紙切ればかりなのだそう。boodle(偽金)を見せられて、催眠術にかけられたかのように指示に従ってしまった、というので、budolと言えば「(催眠術にかけられたように)だまされること」、budol-budolは詐欺全般を意味するようになったようです。
boodleと言えばboodle fight(ブードル・ファイト)を思い出す方もいると思います。1枚のバナナの葉の上にご飯やおかずなどを山盛りにして、皆で手づかみで食べる方法ですが、なぜこう呼ばれるのでしょうか。本来フィリピン国軍がやっていたのが広まったものだそうですが、boodleには「偽金」の他に「大量の物」や「戦利品」あるいは「横流し品」などの意味があり、バナナの葉の上に盛り付けられた大量の食事を競い合って食べるのが「大量の戦利品の山分け」のようだから、というのが由来のようです。
Dugu-dugo
budol-budolにも様々な種類があります。例えばdugu-dugo(ドゥゴ・ドゥゴ)という手口は “dugo”(血)と言われて気が動転するのを悪用した詐欺です。家のお手伝いさんなどに電話をかけ「あなたの雇用主が事故にあって血だらけで、入院費用が必要」とか「拘置所に入れられたから保釈金が必要」などと言って、家にある現金や貴金属を持ってこさせるそうです。中には雇用主のふりをして「私だけど…」と名乗るものもあるそうで、日本の「オレオレ詐欺」と似ていますね。
Salisi
salisi(サリシ)はスリやかっぱらいです。本来salisiは「すれ違い」という意味ですが、お金を落として気を引いてバッグをひったくるとか、座席などに置いた荷物を盗る置き引きや、レジでお金を払っている隙にカバンから携帯電話を抜き取るといった手口がこれに含まれます。
“Nabudol ako!”だまされちゃった!
最近では通信販売などで粗悪品をつかまされたり、不要な物を買ってしまったりしたときに “Nabudol ako!”(だまされちゃった!)と言うようになってきています。
先日、マニラの友人が通販でスマホを注文したところ、写真と違うものが送られてきました。返品・返金を依頼すると「今すぐ300ペソを返金します」とメッセージが送られてきたそうです。そこで販売者とのやりとりの証拠を通販会社に送って返金請求をしたところ、すぐ全額返金が認められました。人によっては”Nabudol ako!”と泣き寝入りしそうですが、その前に通販会社に連絡・通報するのが得策ですね。
観光客の足が戻る中、外国人を狙った睡眠薬強盗や美人局(つつもたせ)なども増えてくるかもしれません。皆さんも、このような犯罪に巻き込まれないように気を付けて安全におすごしください。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。