Maligayang bagong taon!

 

 みなさん明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
 先月2020年のユーキャン新語・流行語大賞には「3密」が選ばれました。英国のコリンズ英語辞典は2020年の言葉として「ロックダウン」、米国のメリアム・ウェブスター辞典は「パンデミック」を選んでおり、やはり世界的にコロナウイルス関連の言葉が選ばれる傾向があったようです。
 そのほか流行語大賞にノミネートされていた中には、韓ドラ「愛の不時着」がありましたが、フィリピンでも「Crash Landing on You」というタイトルでロックダウンの初期に大流行していたのが思い出されます。

 今回は、フィリピンでコロナウイルス関連以外ではどんな言葉が流行していたか紹介したいと思います。

 

 

1. Awit (アウィット)
 フィリピン語のawitは本来「歌」という意味ですが、最近になって1990年代後半以降生まれのGenZ(ジェネレーションZ)と呼ばれる若い世代の間では、SNS上で全く違う意味で使われるようになってきました。残念な知らせなどを聞いた時に「おー、それは辛いね」という意味で “Awww, sakit”と言いますが、その頭のAwとsakitのitだけを残した略語として、この “Awit”を使うのです。sakitは痛い、あるいは病気という意味で、このように「心が痛い」時にも使われます。英語のOuchに対応する幼児語でowie(アウウィー)という言葉がありますが、そのowieとsakitを重ねているという説もあります。友達と会うのが何よりも楽しみな10代から20代の若者は、学校もオンラインになり、友達と自由に会うこともできず、スマホでのチャットやSNSが主なコミュニケーションの手段になってしまったことが反映されているのかもしれません。

 

(用例) Hiwalay na kami ng BF ko!(彼氏と別れちゃったの。)
     

     Awit! (あー、辛いね!)

 

 

2. Flex (フレックス)
 Flexとは、英語で筋肉を収縮させること、つまり筋肉を膨らませることです。そこから、筋トレで発達した筋肉をSNS上などで見せびらかすという意味になり、さらに家や持ち物や達成したことなどを自慢する、という意味になりました。本来は英語のスラングだったものが、フィリピンにもそのまま輸入された形です。何かを見せびらかしていることに対する批判として使われることもありますが、フィリピンでは茶目っ気のある感じで “Flex ko lang”(ちょっとだけ自慢させてね)などと自分の投稿の前置きにしたりします。

Flex ko lang!

 

3. Sana all (サーナ・オール)
 Sanaは「~だったらいいのに」という意味で、allは皆さんご存知の通り、英語の「すべて、全員」という意味です。つまり「全員がそうだったらいいのに」という意味。例えば、幸せそうなカップルを見た時などに「私たちも(他の皆も)そういう風に幸せになりたい!」という意味で使います。
 この言葉の面白いところは、単に羨ましい気持ちを示すだけではなく、「自分にも周りの人にもその幸せがあるように」という気持ちをフィリピン語と英語を組み合わせて表現しているところです。 “Sana lahat (みんなそうならいいのに)”というフィリピン語の表現なら昔からあって珍しくもないのですが、allだけを英語にしたことで新鮮な印象になって流行したのでしょう。言い方によってはやっかみからの皮肉に聞こえる場合もあるかもしれませんが、他人の幸せそうなSNS投稿を批判して「婚テロ」「妊テロ」などと呼ぶよりは “sana all”と、自分にも皆にも幸せがあることを望んだほうが健全ですね。フィリピンでは幸せは共有するもの。そんな意識がよく表れている表現だと思います。

 

 2021年が皆様にとって楽しい歌(Awit)に満ち、自慢(Flex)できることもいっぱいある、そんな幸せな年になりますように!

 

 

文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。