みなさん、こんにちは。Kumusta kayo?前回、ka-という接辞を使った「仲間」や「相手」などを表す言葉について紹介しました。今回は接辞ka-を使ったその他の言葉や使い方について見ていきます。
まず少し文法的な説明になりますが、フィリピン語では、そのままでも言葉として成立する語根(言葉の最小単位)にka-などの接辞が付いてさまざまな派生語が作られます。接辞には、語根の前に付ける接頭辞、後ろに付ける接尾辞などがあり、ka-は接頭辞です。前回取り上げたkasama(仲間)などは語根sama(一緒にいること)に接頭辞ka-が付いただけのシンプルな派生語ですが、フィリピン語では語根の最初の音節を繰り返すことで意味の違いを表現することもあります。
「今~したところ」
意味の “alis”なら、ka-の後に語根の第一音節 “a”を付けて、その後に語根 “alis”が来るのでkaaalisとなり、「出発したばかり」という意味になります。 つまり“Kaaalis lang ni Gemma” と言えば「ジェマは出発したところだ」という意味になるわけです。
この表現は上記の例のように “lang”が後に続くことが多く、langを付けることによって「たった今・今しがた」というニュアンスが強調されます。langは「~のみ」や「たった~だけ」という意味で使われる言葉です。
「終わったばかり」なら「終わる」の語根taposのtaを繰り返してka-を付けるので “katatapos lang”、「起きたばかり」なら「起きる」の語根がgisingなので “kagigising lang”となります。 「食べる」は “kain”ですから「食べたばかり」ならkakakainとなります。「カ」が3つも並ぶ「カカカイン」は、ちょっと面白い響きですね。
「食べすぎたからこうなった」
実はこのように今起きたばかりの出来事、つまり「近過去」を表す以外に、同じkakakainで「ずっと食べてばかりいたから」という意味を表すこともできます。
例えば、 “Tumaba ako dahil sa kakakain.” (ずっと食べてばかりいたから太った)のように使います。このほか「歩く(lakad)」なら “Sumakit ang paa ko sa kalalakad” (歩きすぎたので足が痛くなった)のように何かをしすぎたため何かが起きたという因果関係を示す場合にdahil sa(~の理由で)やsa(~で)などと一緒に使われることが多いです。
でも実際には…
本来は前述のようにka-の後に語根の第一音節、その後に語根を続けて一語を構成するのが文法的には正しいのですが、普段フィリピン人が話しているのを聞いていると語根の第一音節ではなくka-を繰り返しているケースがよく見られます。たとえばkalalakad(歩きすぎ)をkakalakadと表現したり、katatapos (終わったばかり)をkakataposと表現したりします。もっともkakakain (食べたばかり)だと繰り返されているのが語根の第一音節なのかそれとも接辞のka-なのか区別がつきにくいですね。現在は接辞ka-を繰り返す使い方は誤用とされていますが、言語は時代とともに変わっていくものだと考えれば、ka-を繰り返す表現もそのうち正式に認められる日が来るのかもしれません。
フィリピン語はこのようなkaとかpaなどの音が繰り返されたり、頻繁に使われたりするので、全体的に元気よく聞こえる言語でもあります。言語にもフィリピンの人たちの南国らしい陽気さが反映されているのは不思議なことですね。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大(現大阪大外国語学部)フィリピン語科卒。最近の楽しみは出張をより快適にするアイテムを集めること。
Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia