みなさん、こんにちは。Kumusta kayo?これまで何度かka-という接辞を使った言葉について解説してきました。今回は接頭辞ka-と接尾辞-anの組み合わせを使った言葉をみていきましょう。
抽象名詞を作る接辞
接頭辞ka-と接尾辞-anは抽象名詞を作るときに使われることが多いです。抽象名詞とは、具体的に見たり触れたりできないアイデアなどを表す名詞で「平和」や「自由」、「勇気」などがその例です。フィリピン語で「平和」はkapayapaan、「自由」はkalayaanです。パッと見ると長くて難しそうですが、語根の前にka-、語根の後ろに-anが付いているので、kapayapaanの語根は “payapa”、kalayaanの語根は “laya”だとわかりますね。
Araw ng Kagitingan (勇者の日)
「勇気」「勇敢さ」はフィリピン語で “kagitingan”といいます。毎年4月9日は “Araw ng Kagitingan”(勇者の日)というフィリピンの休日です。この日は第2次世界大戦中に日本軍がバタアン(Bataan)半島を占領した日で、米兵やフィリピン人の捕虜がバタアン州マリベレスからパンパンガ州サンフェルナンドまで歩かされ、その道中で1万人以上が亡くなったと言われます。この行進は「バタアン死の行進」と呼ばれ、毎年4月9日が日本軍と戦った人々の勇敢さを称える記念日となりました。
ちなみに “Bataan”は日本語ではよく「バターン」と表記されますが、このコラムでは「バタアン」と表記しています。実はbataのaは喉の所で息を一旦止める声門閉鎖音なので「バターン」のように伸ばす音ではなく、bataとanの間にちょっと区切りがあります。つまり「バタアン」と発音する方がフィリピン語の響きに近いのです。地名や人名などはできるだけ現地での呼び方に近い音になるように表記することを勧めます。
-anが-hanになる場合
接尾辞-anは、その前に来る母音が喉の所で息を止めない音の場合は-hanになるので、-hanの方がよく見かけるかもしれません。例えばKumusta?(元気?)と聞かれた時には“Mabuti naman.”(元気です)と答えますね。このmabutiは「良い」という意味の形容詞です。形容詞を作る接辞ma-を取って語根だけにすると “buti”になります。これにka-と-anを付ける場合、butiのiは喉が詰まらない音、つまり声門閉鎖音ではないので-anが-hanになりkabutihanとなります。kabutihanとは「善良さ」を意味する言葉です。また “Magandang umaga!”(おはようございます)は直訳すれば「美しい朝」という意味ですがmaganda(美しい)のma-を取ってka-と-anを付けるとkagandahanとなり「美」「美しさ」という抽象名詞になります。
Kasalanan 「罪」「犯罪」
先日、ICC(国際刑事裁判所)からの逮捕状に基づきロドリゴ・ドゥテルテ前大統領が逮捕されました。その時ドゥテルテ前大統領は “Wala akong kasalanan”(私に罪はない)と発言したそうです。このkasalanan「罪」も抽象名詞です。kasalananは上記の場合と少し違い、語根salaにka-と-nanが付いています。salaは「的(まと)から外れる」ことを表す言葉で「正しさという基準から外れること」=「罪」という考えから来ています。このようにka-と-nanが付くケースは、kasalananの他にkabihasnan(文明・先進)など非常に稀です。
今回はka- と-anという接辞の付く言葉をみてきました。フィリピン語では、接辞を制する者はフィリピン語を制すると言っても過言ではないほど「接辞」は重要です。ka-と-anの付いた抽象名詞は、フィリピンの町の名前や通りの名前などにもよく使われているので皆さんもka-~-anの付いた言葉を見かけた時は、この語の語根はなんだろう、と考えてみてくださいね。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大(現大阪大外国語学部)フィリピン語科卒。最近の楽しみは出張をより快適にするアイテムを集めること。
Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia