みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピン人は一般に家族の結びつきが強いと言われています。今回はそんな家族の呼び名や概念について紹介します。
子と家族
「家族」はフィリピン語でmag-anakと言い、スペイン語由来のpamilyaもよく使われます。mag-anakの語根であるanakは「子」という意味です。 一般的な「子ども」はbataという言葉を使いますがanakは家族の中での「子」という意味で使われます。
“Anak”と言えば、少し年配の方なら加藤登紀子が歌った「Anak(息子)」(1978年)をご存じかもしれません。これはフィリピンの歌手フレディー・アギラの原曲を日本語にしたカバー曲です。邦題は「息子」ですが、anakという言葉は娘も息子も示すので、それだけでは性別はわかりません。性別を区別したいときは “anak na lalaki” (男の子ども) “anak na babae”(女の子ども)と使い分け、親が子どもに対して呼びかけるときは “anak”だけを使います。このanakに接頭辞mag-を付けるとmag-anak(家族)になります。そしてさらにka-を付けるとkamag-anak(親戚)という言葉になります。
母と父
フィリピン語では「母」はinaで「父」はamaです。これらは出生証明書などの公式な書類やスピーチで使われることが多く、親を呼ぶときはNanay、TatayやMama、Papa、またはMom、Dadを使う人が多いと思います。「親」はmagulangと言い、両親であれば複数を表すmgaを付けてmga magulangと言います。mag-inaと言えば「母子」を表し、mag-amaと言えば「父子」を表します。
兄弟姉妹
子どもたちの中で最初に生まれた子はpanganayで、末っ子はbunso。お姉さんはate、お兄さんはkuyaです。このateとkuyaは福建語のachi、ko-iaからの借用語で 、フィリピンの一般家庭ではお姉さんやお兄さんは順序に関係なくate、kuyaと呼びますが、華僑の家庭では2番目、3番目のお姉さんをditse、sanseと呼び、2番目、3番目のお兄さんはdiko、sangkoと呼び分けることが多いようです。兄弟姉妹はkapatidと言い、同様にmag-を付けてmagkapatidにすると、「きょうだい同士」という意味になります。フィリピンの人は初対面のときに “Ilan kayong magkapatid?” (何人きょうだいですか?) “Tatlo kami. Panganay ang kuya ko, susunod naman ang ate ko, at ako ang bunso.” (3人です。お兄さんが一番上で、その次がお姉さん、そして私が末っ子です)のような会話をすることがよくあります。
おじさん、おばさん、おじいさん、おばあさん、いとこ
tito(おじさん)やtita(おばさん)はスペイン語のtio、tiaから来ています。おじいさんはlolo、おばあさんはlolaと呼び、これらもスペイン語のabuelo(祖父)、abuela(祖母)から来ています。
フィリピンの人が「自分のloloが~」と言うとき、祖父の話だと思って聞いていると噛み合わないことがあります。よく聞いてみると、祖父母の兄弟の話だったりします。これは日本なら大叔父、大叔母にあたる祖父母の兄弟姉妹のこともフィリピンではlolo、lolaと呼ぶためです。この他、「いとこ」「はとこ」のことをまとめてpinsanと言うこともあります。必要なら「いとこ」をpinsang buo、「はとこ」をpinsang makalawaと区別することもあります。
このように誰を家族と考え、その人をどう呼ぶかはその文化的背景によって違ってきます。家族や親戚の呼び方も、元々あったマレー系の言葉、スペインや中華文化の影響など、さまざまな要素が絡み合っているのがフィリピンらしいところですね。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大(現大阪大外国語学部)フィリピン語科卒。最近の楽しみは出張をより快適にするアイテムを集めること。
Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia