みなさん、こんにちは!Kumusta kayo? 今月はきっと皆さんも聞いたことのある言葉「シゲ」をご紹介します。電話を切る時も「シゲシゲ」、お別れするときも「シゲ―!」(sige)なにか物を頼まれた時も「シゲ・ポ!」。「シゲ」は様々な場面で様々な意味で使われる言葉です。
シゲの一番一般的な意味は「OK」という意味ですから、物を頼まれた時「シゲシゲ(オッケー!)」「シゲ・ポ!(かしこまりました)」と言うのは、見当が付きますね。その他にも上に挙げたように、「シゲ」は「バイバイ」ような軽い別れの挨拶に使います。「ポ」をつけて「シゲ・ポ」と言えば目上の人にも使えます。
元々フィリピンにあった言葉かと思いきや、実はこれもスペインからの外来語です。スペイン語のseguir(続ける)という言葉の活用形sigueがフィリピン語の “sige”の原型のようです。スペイン植民地時代に、スペイン人と話す時、「(話を)続けて」「わかった、それでやりなさい」などと言う意味で「シゲ」が使われ、そこから了解の意味になったり、いとまの挨拶になったりしたのだろうと思います。
フィリピン語には小辞と呼ばれる副詞的な言葉があり、これらと組み合わせることによって、一つの言葉がまったく新たな意味を持つようになります。尊敬を表すpoもその一つですが、ほかにもna(もう、既に)やpa(まだ、未だに、もっと)、nga(意味を強調する)などがあり、たとえばlang(~だけ)と組み合わて「シゲ・ラン」と言えば、「別に大丈夫ですよ」という意味になりますし、またpa(まだ、もっと)と一緒に「シゲ・パ」と言えば「もっと行け、もっとやれ、まだ行ける」という意味になります。
それがnaをつけると、 「シゲ・ナ」となりますが、直訳すれば「もう『シゲ』(と言ってくれ)」つまり意訳「いいじゃないの、お願い」というおねだりの言葉になるのです。カラオケのかわいい女の子に「日本の化粧品を買ってきて、シゲ・ナ~、シゲ・ナ~。」「次はブランド物のバッグ買ってきて、シゲ・ナ~」なんて頼まれて、仕方なく承諾するときは、これにさらに強調のnga(便宜上「ンガ」と表記しますが鼻濁音の『が』と同じ音)をつけて “Sige na nga”「シゲ・ナ・ンガ~」というと「仕方ないなぁ、わかったよ」という意味になります。ところが、「シゲ・シゲ」と言うことを聞いているうちに、それが奥さんにばれたりしたら、さあ大変 。「シゲ・カ!」と言われてしまうかもしれません。Sigeに「あなた」という意味の “ka”がつくから「あなたはオーケー」かと言うと、いえいえ、とんでもありません。こちらは「そういうことするなら、覚悟しときなさい!」って言う威嚇をこめたニュアンスなんですね。ですから皆さんも「シゲ・ナ、シゲ・ナ」には気安く「シゲ・シゲ」なんて答えないように気をつけましょう。
文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。 |