チョコレート味の粥
異色のコンビは最強の朝食

 

 

 チャンポラドはフィリピンで主に朝食として食べられるチョコレート入りの粥(かゆ)である。チョコレートも粥も好物だが、一緒になると話は別。マニラで初めて見たときは、どこから粥にチョコレートを入れる発想が出てきたのかとあきれた。それまで東南アジアで中華風の肉や魚、ピータン、カエル入りの粥を食べたことはあっても、チョコレート入りというのは初めて。私にとって粥はSavoryなものであって、Sweetなものであってはならない。酢豚にパイナップルどころの話ではない。

 

 


 チャンポラドの歴史を調べてみると、原型はメキシコのチャンポラドという名のチョコレートドリンクである。スペイン統治時代、マニラとメキシコ間の貿易でチャンポラドがフィリピンにもたらされ、その後、フィリピンでもち米が使われるようになった。さらに、米国の統治時代にココアパウダーが入手できるようになって今日のチョコレート粥となったとされる。ホセ・リサールがホットチョコレートをご飯の上に誤ってこぼしたのがチャンポラドの始まりという説もある。

 


 チャンポラドを食べるときはココナツミルクをかけ、トゥヨ(Tuyo)と呼ばれる小魚の干物と一緒に食べて、チョコレートの甘さと干物の塩辛い味を両方楽しむのがベストと言われる。だが、筆者の周りでは、「チャンポラドとトゥヨの組み合わせで食べることはない」と断言するフィリピン人ばかりで困惑している。

 

 


 最初はチョコレート味の粥なぞ食べられるものかと思っていたが、先頃久しぶりに食べてみたところ、クリーミーでなめらかなチョコレートとやわらかいもち米は相性がよく、おいしい。日本のぜんざいみたいなものだと思えてきた。そういえば、ライスチョコレートバーというのもあるではないか。健康にいいと注目を集めるチョコレートと、腹持ちがいいもち米からなるチャンポラドは、まさに1日のスタートにふさわしい朝食の最強タッグなのである。(T)

 

 

 

(初出まにら新聞2024年2月15日号)