【ローカルフード再発見】クエックエッ Kwek-Kwek

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2024年6月18日

 

 

 

 

オレンジ色に包まれたうずらの卵
その名は鳥がさえずるような

 

 マニラの路上に出ている屋台のメニューには惹(ひ)かれるものがあって、時々、食べたい衝動に駆られる。だが、ガラスの胃袋の持ち主としては勇気がいる。ヘルシーな食べ物とは言い難いが、そういうものにこそ惹きつけられるので困ったものだ。

 

 


 オレンジ色の団子のようなものが串に刺さって売られているのを見て、フィリピン人の友人にあれは何かと聞くと、クエックエッだと答えた。その昔テレビのCMで「クエックエックエッ、チョコボール」というのがあったなあと思い出す。余計なことを言わずに食えッ食えッと言われても、得体のしれないものを食べるわけにはいかない。

 

 


 一見、スイーツのようにも見えるオレンジ色の物体の正体は、ゆでたうずらの卵に、オレンジ色の衣を付けて揚げたもの。うずらの卵が好きで、中華丼に入っているうずらの卵は最後まで大事に取っておく筆者ゆえ、思い切って屋台で食べた。醤油と酢のディップソースにつけて食べると、ちゃんとおいしいうずらの卵の天ぷらである。焼き鳥屋にうたま串と一緒にあってもいいような。

 

 


 クエックエッは、偶然生まれたという伝説がある。首都圏ケソン市クバオでバロット(孵化直前のアヒルの卵をゆでたもの)を売る女性が、売り物のバロットを落としてしまった。女性は無駄にしたくないと思い、落としたバロットの殻をむき、小麦粉を付けて揚げた。

 

 

 

 こんな話らしいのだが、うずらの卵になった経緯もオレンジ色に着色した由来も出てこない。クエックエッという名前は英語でうずらのQuailにちなむと思っていたが、鳥がさえずる声を意味するらしい。タガログ語でうずらはプゴ(Pugo)という。ちなみに大きいクエックエッのニワトリの卵バージョンは、トクネネン(Tokneneng)と呼ぶ。こちらは1970年代のフィリピンのコミックの登場人物が、卵のことをこのように呼んでいたことに由来するのだそう。

 

 


 さて、気になるオレンジ色はアナトー(紅の木)の種からつくった粉によるものだ。なぜオレンジ色が選ばれたのかは不明。どうして他の色でないのかと考える人はやはりいるようで、ネットでは赤、黄色、緑、紫、青などのクエックエッを作ってみたという投稿がある。それらを見ると、やはりオレンジ色でよかったと思う。最初にクエックエッを作ってオレンジ色で広めた人は正しかった。(T)

 

 

 

(初出まにら新聞2024年5月2日号)

 

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