濃厚スープにやわらかポーク
中華街で生まれたB級グルメ

 

 

 今から7年ほど前、マニラの中華街ビノンドに初めて行ったとき、メインストリートのオンピン通りにあって、いかにも歴史がありそうでこじんまりとした街中華のようなたたずまいの食堂に入った。その店がオンピン・マニョーサレストラン(Ongpin Mañosa Restaurant)。

 

 確かメニューの一番上の方に書いてあったMaki Miというのを注文した。漢字で肉、何と読むかわからない漢字(羹)、そして麺と書いてあったので肉入りの麺だろうと想像した。マキというから肉巻? とも思ったが、出てきたのは豚肉の揚げ物が入った醤油ベースのあんかけ風スープに黄色い麺。いかにもB級グルメな見た目である。ビノンドの中華系フィリピン人社会で生まれ、マキミーという名前は福建語で肉のスープ麺という意味らしい。

 

 

オンピン・マニョーサレストランのマキミー(230ペソ)

 

 

 豚肉に脂身はなく、マリネされてとてもやわらかくて、味が染み込んでいる。衣はトロッと濃厚なスープにまみれて、すでにパリッともサクサクともしておらず、しんなりソフトな食べ応え。スルスルッと食べてしまえそうだ。麺が短く切ってあるのは、この料理は麺が主役ではなく、あくまでスープとしてお楽しみくださいということだろうか。

 

 

 先頃ビノンドへ行ったとき、数年ぶりにオンピン・マニョーサでマキミーを食べた。この店でマキミーに出会って以来、他の店でもマキミーを食べたことはあるが、すべてビノンドの店だ。マニラのほかの地区でも提供されているかもしれないが、やはりマキミーは誕生の地ビノンドで食べたいものである。(T)

 

 

(初出まにら新聞2023年11月30日号)