いまやすっかりマニラの風景の一部となったバイクタクシー。マニラに登場したのは4、5年前だろうか『まにら新聞』によると、2018年にセブ発の会社がマニラでサービスを開始したとある。営業停止処分などの紆余曲折やパンデミックも乗り越えて、今は数社がメトロマニラ市民の足となって活躍している。マニラのバイクタクシーについて、まにら新聞記者5人に聞いてみた。

 

 

いい点もある。
だけど困る点もある

 

 
 てっきり取材に行く時に社用車が使えなかったりして、やむを得ずバイクタクシーを選んでいるのかと思えば、記者たちは、仕事でもプライべートでも積極的に活用していることが判明。中には「マイヘルメットを買うことも検討している」(F記者)というヘビーユーザーも。さて、バイクタクシーのいいところとは?

 

 

「車の間をスイスイ行くので時間の節約になる。運賃もタクシーなどの半分以下で済む。MRTやジープのように行き方の事前調査が不要」(T記者)

 

 

「駅まで行く必要がなく、指定した乗車場所から目的地まで行ける。グラブはつかまらないこともあるし、バイクの方が運賃が安い」(F記者)

 

 

 評判は上々。しかし、困った点もある。

 

 

 

 

「ヘルメットが臭うし、降車後も髪にその臭いが残ってしまう。また、以前乗った時、運転手が気を利かせて後部の収納ボックスに荷物を入れてくれた。しかし、乗車中にその収納ボックスには鍵がなく、振動でふたが開閉するほど取り付けがゆるいことに気付いた。パソコンやカメラの入ったバックパックが盗まれないか、段差で落ちないか気が気ではなかった」(N記者)

 

マニラで急速に普及したバイクタクシー(イメージ写真)

 

 

 

「どんなに髪型を整えても、ヘルメットを被ると前髪がペシャンコになる。ある時、マカティからケソン市に向かう途中、土砂降りに見舞われた。運転手が雨具の上着を貸してくれたが、ジーンズを履いていた足はずぶ濡れで大変だった」(F記者)

 

 

「バイクタクシーの会社によっては早く捕まえるためチップを追加できるシステムがある。先日なかなか捕まらないので100ペソ追加した。するとやっと来た運転手の第一声は『アプリでチップを入れると会社に取られるから現金でくれ』。チップを入れるまで私をスルーしていたのか?」(T記者)

 

 

「運転手に日本人だと知られると、決まって『日本語教えて』と言われる。結果、乗車時間が無料日本語教室に。運賃を支払うどころか私に授業料を払ってほしい」(A記者)

 

 

 

タガログ語で
バイクタクシーは?

 

 

 マニラ首都圏内の移動に便利なバイクタクシーは、それなりの遠距離でもマカティからケソン市カティプナンまで約250ペソ、マカティとアラバン間約30分で270~290ペソといったところ。しかし、記者の中には片道3時間をバイクタクシーで行った猛者がいた。

 

 

「以前はバイクタクシーを通勤にも使っていた。これまでで一番遠かったところは、取材で行ったラグナ州のカリラヤ日本人戦没者慰霊園。運転手と交渉して運賃はマカティから往復2000ペソ。背もたれもないバイクに乗って往復6時間はきつかった」(O記者)

 

 
 交通渋滞と法外な運賃をふっかけられることもあるタクシーに悩むマニラにあって、バイクタクシーは救世主かもしれない。

 

 

 ところでバイクタクシーと聞くと、筆者は昔住んでいたベトナムを思い出す。配車アプリなどなかったので、乗る時は街のあちらこちらにいる運転手を見つけ、行き先を伝えて運賃を交渉するのが常だった。ベトナム語でバイクタクシーはセオム(Xe ôm)。Xeは「車」、ômは「抱く」という意味で、後部座席の乗客が運転手に抱きつく様子に由来する。わかりやすくちょっとセクシーな名前ではないか。フィリピンでもバイクタクシーなんて味気ない名前でなく、気の利いた母国語の名称で呼びたいものだ。フィリピンのバイクタクシーにはハバル・ハバル(Habal-Habal)という呼称もあるが、アプリで移動できる時代にふさわしい呼称に変えよう。タガログ語で乗り物はsasakyan、抱くはyakapin。 ササクヤン・ヤカピン。ちょっと長いので省略して、ササ・ヤカ。日本人には覚えやすいし、なんだか謙遜している感じが伝わってきて、いいんじゃないだろうか?(T)

 

 

人も子豚も運ぶ北ダバオ州サマルのバイクタクシー、ハバル・ハバル(2009年) (Wikimedia Commons CC2.0, Paul Lewin)