どれだけ食べてもあきないものは何かと聞かれたら、私の場合、チーズ鱈(たら)か、ゼリーである。日本でおなじみのハウスのゼリエースだったら、どんぶりいっぱいは軽い。洗面器にいっぱいでも行けそう。その気になれば、ユニットバスいっぱいでも食べることができるのでは? と思うほど好きだ。
マニラではもっぱら米国のJELLOやローカルのグラマン(Gulaman)を作る。グラマンは寒天のこと。英語でアガー(Agar)。マレーシアなどにあるようかんのようなデザート、アガアガという名前の由来はこれらしい。ゼリーがゼラチン、牛の骨髄からつくる動物性なのに対し、グラマンは海藻を抽出した植物性。マニラのスーパーマーケットには、このグラマンの種類が多くそろっている。赤、緑、黄、白、茶、黒いのまであってとてもカラフルだ。
見た目も奇怪なゼリー型
先日、ネット通販Shoppeでゼリーの型を買ってみた。型は魚、子どもの頭、脳みそ。実際につくってみて一番よくできたのは魚で、ウロコや口、ヒレもちゃんと再現された。赤のイチゴ味、JELLOでつくった黄色のレモン味、パンダン味の緑はそれなりに楽しめたが、黒いのは味がなく、はちみつをかけたり、フルーツ缶詰のシロップに混ぜて食べたが、1匹食べるのは大変だった。薄く切って刺身のように醤油で食べることも考えたが、勇気がなかった。
子どもの頭は表情がはっきりとは出ないけれど、この型がたくさんあったら、いっぱいつくってひと口ゼリーやグミのように楽しめそうである。
脳みそはうまく固まらず、しわもきちんと再現されなかったのが残念。どうしてグロい脳のゼリー型があるのかと思えば、ハロウィンの時のデザートに使われるらしい。イチゴ味の脳みそを食べながら、中国料理の珍味にサルの脳みそがあると聞いたとか、スリラー映画『ハンニバル』に脳みそを食べるシーンがあったなあと思い出す。
次はどんな形のゼリーを作ろうかと型になるものを探していたら、マカティシネマスクエアの雑貨店で女性のマネキンの上半身の片側半分が売っていた。ゼリーを流し込める。だが、大量のゼリーが必要になり、大きくて冷蔵庫で冷やして固めることはできない。どうしようと考えながら、ふと冷静になった。日本人のおっさんが1人でマネキンの形のゼリーを食べている。そんなことをしてはいけない。危ない人になるのを踏みとどまった。(T)