フィリピンで気になるモノ・コト

 

 

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国はそれぞれ歴史的背景も異なり、独自の文化を持つ。そして言葉も違う中で、英語が共通語となっている。ASEAN内でも英語を公用語の一つとしている国はあるが、シンガポールやマレーシアなど英国統治の影響のある国では主にイギリス英語であり、ご存知の通りフィリピンはアメリカ英語が主流だ。 

 

 私の時代は日本でcenter と綴りを習ったが、イギリス英語の国ではcentreとなり、organizationがorganisationとなる。skepticalがscepticalになると知った時は、まさに疑りたくなった。しかし、イギリス英語を使うならちゃんとpractice(動詞)、いや、practiseしなくてはならない。英国の男の子が米国の文房具店で消しゴムを買いに行って「rubberをください」と言ったら、米国人の店員は別の意味にとらえて「薬局に行って」と言うか、「あなたにはまだ早すぎるでしょ」と説教するのだろうか、と変な想像をしたくもなる。 

 

 

 以前、万聖節に墓地を掃除するフィリピン人女性を取材した時、私がごみをrubbishと言ったところ、「ラビット?」と聞き返された。発音の問題もあるのだろうが、大量のゴミを前に「今年のごみの量は昨年より多いでしょうか」と聞いているのに、どうしてウサギが出てくるの? と思うのは、私の思い上がりである。フィリピンでは生ごみは一般にgarbage であった。

 

 

 フィリピン人の同僚と会話をする時、私はタガログ語ができないので同僚は英語で話してくれる。時として英語の会話にタガログ語が混じる。語尾によく「ディバ?」と付くのでいったい何かと聞いてみたら、タガログ語で「di ba?」というのはdi はタガログ語で否定文に使う hindi の省略で、英語の付加疑問文に当たるらしい。「○○ , di ba?」と言われるたび、 私には「出刃?」と聞こえてしまう。そして、フィリピン人の和食料理人が包丁を手に、「これは出刃, di ba?(出刃ですね?)」と言っている光景を思い浮かべて、1人心の中でほほ笑んでいる。 (K)

 

 
※初出まにら新聞2016年12月16日号掲載を再編集。