マカティ市アヤラのランドマーク・スーパーマーケットの入口にあるフードコートに、先頃たい焼きやおにぎりを売る屋台風の店がオープンした。その店名は「ケソロJIRI」。ケソロって何? 看板にはケソロと書いてあるように読める 。今話題の日本人に読めないフォントElectroharmonixではないかとの意見もあった。とにかく、まったく意味がわからない。さらに、猫がたい焼きを抱えたロゴには、漢字で「巨尻」と書いてある。念のため店のスタッフに店名は何と読むのかと聞くと、確かに「キョジリ」と答えた。
ある日本人の同僚は「たい焼きの尻の部分が大きく、あずきあんがたっぷり入っていることを強調しているのでは?」と深い洞察を示した。一方、私はエロいビデオのタイトルを連想して、たい焼き店にふさわしいだろうかと心配になった。フィリピンでたい焼き=「巨尻」で浸透してしまったらどうしようと、複雑な気持ちになる。
実際にたい焼きを買ってみると、特にお尻の部分が大きいわけでもない。だいたいタイのお尻ってどこ? 尾びれのこと? そんな店名のことなど気にせずに、ローカルの客がたい焼きをまとめ買いして行く。一番人気はレッドビーン(あずきあん)。フィリピンの皆さん、日本のたい焼きの基本をご存知のようだ。ほかにチョコレート、抹茶、カスタード、チーズ入りがある。そして日本のたい焼きに比べて形が雑で、羽根つき餃子ならぬ「羽根つきたい焼き」である。
フィリピン人の同僚にあずきあん入りを食べてもらったところ、FISH SHAPED PANCAKEと呼ばれて好評だった。「あんがもっと多く入っているべき」という意見も出た。やはり、あんは尻尾まで入っていてほしいものである。どうして魚の形をしているのかとも聞かれた。確かにどうしてだろう?
日本が誇るもう一つの粉もん、たこ焼きはすでにローカライズされてフィリピンでも親しまれている。たい焼きはフィリピンでどのような進化を遂げるのだろう。タイの代わりに、ティラピアかバグス(ミルクフィッシュ)になったり、あずきあんのかわりに、モンゴ豆のあん、さらにシシグ入りなども生まれるのかもしれない。(T)