カニに詰まった美味
食欲も気分も盛り上がる
カニの甲羅を器に、カニの身や野菜を練り込んだ詰め物が山のように盛り上がる。レレノ(rellenoあるいはrelyeno)はタガログ語で「詰めた」、アリマサグは小型のカニ(ブルークラブ)の意味。詰めるという調理法はスペインの影響とされるが、厳密にいうと見た目は「詰めた」というよりも、「載せた」と言った方がよさそう。しかし、詰め物たっぷりで甲羅の中に詰め切れなかった感が見栄えを引き立たせているので、よしとしたい。
アリマサグのほかにも、大型のカニ、アリマンゴ(Alimango、ジャイアント・マッドクラブ)を使うレレノン・アリマンゴ、バグス(ミルクフィッシュ)に詰めたレレノン・バグス、チキンに詰めたレレノン・マノック、ナスにひき肉を詰めたレレノン・タロンという具合に、いろいろなバージョンがある。そんな中でも、イチオシはなんといってもカニ。フィリピンではレレノン・アリマサグはパーティーのごちそうとされている。テーブルに並んだ瞬間に消えてしまうだろう。
「カニを食べているときが一番幸せ」という人は、筆者のほかにもたくさんいらっしゃると思う。石川県金沢市の「金沢おでん」に香箱ガニの甲羅に身とかにみそなどを詰めたカニ面という絶品の具がある。そのフィリピン版と思いながら食べるのも一興。種類は違えど、カニのおいしさに国境はないのだ。
レレノン・アリマサグは、ローカル食堂のカレンデリアなどでも売られているが、気を付けたいのが値段。食堂に並ぶおかずの中で、単品で恐らく一番高価なメニューである。マカティで調べたところ、小ぶりなもので1個120ペソ、大きめのものになると320ペソ。約100ペソでライスとおかず2品を食べることができるところを、レレノン・アリマサグ1個のためだけに使うのは給料日前の私にとっては勇気が必要だ。
次に気を付けたいのは、名前である。見ての通り綴りにRとLが近くにあって発音しにくい。カレンデリアではただ指をさせば注文できるが、普段から発音を練習して、あえて言葉で伝えたいものだ。筆者は、指さしと言葉両方で伝えている。店の人がどちらを認識して私にレレノン・アリマサグを提供してくれているのかは、定かでない。(T)