いきなり旅行記
観光名所、珍スポット、ローカルグルメ…記者が思うままに綴る。
2月後半、コロナ禍によるロックダウンが始まる前、初めてベトナムのホーチミン市に4泊5日で旅行した。宿泊したのは市内1区のブイビエン通り(BuiVien)。バックパッカーが多く、繁華街に近いのも魅力だった。少し歩けば500メートル程の川幅があり、濁った水を悠々と運ぶサイゴン川に出る 。
かつて、小説家の開高健は『ベトナム戦記』(朝日文庫)でベトナム戦争時のサイゴン(現ホーチミン市)を「眠らない街」と形容した。当時の印象そのまま、ブイビエン通りの喧噪には圧倒された。クラブやバーの前では大音響とともに胸元を露わにしたコンパニオンが客を呼び込んでいるし、通りでは椅子をぎっしり並べての路上飲み。大きなスピーカーにスマートフォンを繋いだだけの「ひとりカラオケ」が5メートル間隔で連なる風景は、社会主義国のイメージにはない新鮮な驚きだった。
食べ物への好奇心(実は「食」が今回の旅行の目的!)に駆られ、リーチュウチョン通り(Ly Tu Trong)のエキゾチックな肉が食べられるという料理店「ルオン・ソン・クアン(Luong Son Quan)」に行った。興奮して黒々とした焼サソリを1匹注文すると、カニ味噌のような身がわずかに入っているだけ。4万ドン(約190円)の味にしてはそっけなかった。ヤギの胸とイノシシの焼肉は量も多く、相当な歯ごたえと食べ応えがあった。各15万ドン(約700円)と手頃な値段だ。イノシシ肉が無味乾燥に思えるほど、ヤギ肉は独特で深い味わいがあった。
最終日にはメコン川観光ツアーに参加し、米焼酎漬けのコブラ酒を味わった。いかにも滋養強壮に効きそうな薬っぽい味だ。昼食時にネズミ肉を12万ドン(約550円)で注文すると、カエル肉の唐揚げに似た姿で現れた。脂身が少なく、鳥のささみを食べているようだった。もっとケモノ感を期待していただけに、ちょっと物足りなさが残った。
ベトナム料理の定番、フォーを食べ忘れたことに気がついたのは、ホーチミンを飛び立った後だった。
(岡田 薫/まにら新聞記者)