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漁船に乗って スカーボロ礁へ

2017年6月15日

写真で振り返る「冒険の旅」 まにら新聞取材班
文・写真:加藤 昌平
Go on an adventure with local fisherfolks to Scarborough Shoal !
By: The Daily Manila Shimbun news crew

母船の船名はカーミ・バデット号。全長約18メートル。両舷にはエンジン付きの2人乗り小型ボートを積んでいる。

母船の船名はカーミ・バデット号。全長約18メートル。両舷にはエンジン付きの2人乗り小型ボートを積んでいる。

スカーボロ礁に行きたい、と思っただけでおいそれと行けるようなところではない。そんなことは分かっていた。昨年10月、ドゥテルテ大統領の中国訪問がきっかけになり、スカーボロ礁での中国の妨害が止まった。それと同時に、各国のメディアがこぞって礁を目指し始めたのだった。フィリピンのメディアも日本のメディアも、次々と「スカーボロ礁潜入記」を報じる。これは自分も現地に行って、つぶさに状況を観察しなければ。冒険心がうずいた。
しかし、どのようにしてスカーボロ礁に行くか。そこで思いついたのが、現地の漁師に同行することだった。通常の漁に同行すると、1週間近く海にいることになる。しかし、普通では見ることのできない漁師たちの海上生活を観察できる、またとない機会だ。
4月16日早朝、ついにパンガシナン州インファンタの町にあるカト港から、スカーボロ礁行きの漁船カーミ・バデット号(総積載量8トン、ガブナン船長)に乗ることができた。連絡の行き違いや天候のせいで、出港までに2度の肩すかし。そのたびにマニラまで片道6時間、丸一日かけて往復した。やっと今回は三度目の正直だ。しかし海に出たらどれほど危険な目に遭うのだろうか。違う意味で胸の高鳴りが止まらなかった。出港が伸びたおかげで漁師たちと酒を飲むことができたし、漁での貴重な体験談も聞かせてもらえた。漁師町ならではの新鮮な魚を調理したうまい酒の肴にもありつけた。これがけがの功名というのだろう。
何はともあれ、こうしてまにら新聞取材班一行は片道200キロ以上、漁船で24時間の冒険の旅に出たのである。

スカーボロ礁で漁をする中国漁船。フィリピンと中国の漁師たちは、食料にする魚やコメ、足りなくなった氷など、あらゆるものを物々交換する。中国側が加工食品や嗜好品を差し出す一方、フィリピンの漁師たちはシャコ貝やロブスター、魚のラプラプなど漁で捕れた魚介類を中国側に渡す。フィリピン漁船のそばを行き交う中国の漁船や海警局艦船の乗組員がみな、こちらに手を振る。漁船の漁師もそれに応えて手を振り返す。その光景は礁で起きているだろうと想像していたものよりも、和やかなものだった。「中国とは友人だ」、ダルカ漁労長が言った。

母船カーミ・バデット号は3隻の緑色のバンカ(小型船)をロープでつないで引いていた。ビサヤ地方セブ州から出稼ぎに来た漁師たちの船だ。彼らは毎年漁期になると、ルソン島の漁師たちに雇われて礁でともに漁をする。セブの漁師は素潜り専門で、モリを使って大小さまざまな魚を捕る。スカーボロ礁に行くルソン島の漁師たちは、3〜6月の漁期になるとセブまで出向いて、この特殊な専門集団を雇う。

食事は1日3食、みんなで仲良く談笑しながら食べる。主に捕れた魚をその場で調理する。イニハウ(焼き魚)や酸味のあるシニガンスープ、醤油と砂糖で炒めたアドボなど、調味料と調理方法を変えて飽きないように工夫する。それにしても、彼らは飯をよく食べる。皿には山のように飯が盛られ、いくら食べてもなくならない。それを、あっという間に平らげて各自の作業に戻るのだ。体力勝負の仕事では、すぐエネルギーに変わる炭水化物が大量に必要だ。

食事は1日3食、みんなで仲良く談笑しながら食べる。主に捕れた魚をその場で調理する。イニハウ(焼き魚)や酸味のあるシニガンスープ、醤油と砂糖で炒めたアドボなど、調味料と調理方法を変えて飽きないように工夫する。それにしても、彼らは飯をよく食べる。皿には山のように飯が盛られ、いくら食べてもなくならない。それを、あっという間に平らげて各自の作業に戻るのだ。体力勝負の仕事では、すぐエネルギーに変わる炭水化物が大量に必要だ。

スカーボロ礁での沖合漁を生業とするパンガシナン州の漁村カト。かつては勇気のある漁船が夜中に礁内へ侵入し、こっそりと漁を続けていた。中国に抵抗して放水砲を浴びた漁師もいた。現在、中国海警局の妨害はなくなり、逆にフィリピンの漁師が溺れると救助して、マニラの比沿岸警備隊まで送ってくれるようになったという。

漁船の上で天日干しされる魚

漁船の上で天日干しされる魚

バデット号では「はえ縄漁」も行う。長さ数十メートルの幹縄に、針の付いた枝縄を一定間隔で取り付けた仕掛けを、日中、魚の生息地に設置する。夜になると2人組になってボートに飛び乗り、仕掛けを回収しにいく。真っ暗闇の海にエンジン音だけが響く。数十分で船に戻ってくると、1メートル以上はあろうかという、黒光りする魚を積んできた。現地で「タラキート」と呼ばれる、ロウニンアジだ。

スカーボロ礁】

2012年から中国が実効支配し、フィリピン人漁師の漁が妨害されていた南シナ海スカーボロ礁。昨年10月のドゥテルテ大統領訪中をきっかけに漁が再開されたが、依然不安定な状況が続いている。