みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 前回は “traffic”や”CR”など、フィリピン独自の英語の語彙を紹介しました。今回はその続編として、フィリピンでの変わった英語の使い方です。
1. イギリス式の語彙
フィリピン諸語には従来母音が少なく、fやvの音が存在しなかったため、英語を話す時もfとp、vとbが入れ替わったり、あいまい母音を使わないなどの特徴があります。全般に発音も語彙もイギリス英語よりアメリカ英語に近いと言われ、過去にアメリカの植民地であったことや、映画やテレビ、楽曲などの影響が考えられます。
そんな中、面白いことにアメリカ寄りのはずのフィリピン英語にはイギリス式の語彙が混在しています。例えばアメリカでは「追い越す」を“pass (a car)”と言いますが、フィリピンではイギリス式に “overtake (a car)”。また立体交差の高架橋のことをフィリピンでは “flyover”と呼びますが、これもイギリス式。アメリカでは主に “overpass”を使います。そして、道が二方向に分かれている三叉路のことをフィリピンでは”junction”と呼ぶ場合がありますが、これも実はイギリス式で、アメリカでは主に”fork”を使います。車両は右側を通行するアメリカ式を採用しているのに、このような交通関連用語にイギリス式の名称が混じっているのは不思議ですね。
2. “For a while.”
フィリピンでは電話などを切らずに「そのままお待ちください」という意味で”For a while”と言うことがあります。
“For a while”は標準英語では「しばらくの間」という意味で、数時間から数日間など比較的長い単位の時間を意味することが多く、またそれだけで「お待ちください」という意味にはなりません。これを電話口で聞いたら「しばらくって何?」と思ってしまう人もいることでしょう。標準英語では “Stay on the line”あるいは”Just a moment, please”などと言うべきところ、フィリピンではなぜか “For a while”が定着してしまったようです。
3. “I’ll go ahead.”
標準英語で”I’ll go ahead”と言えば、2人のうちどちらかが「先に行きます」あるいはプレゼンなどを「先に行います」と言う場面を想像できますが、フィリピンで仕事の後や会食の後などにこの表現を聞いたら、これは「お先に失礼します」という意味です。フィリピン語では先に席を立つ人が “Mauuna na ako.”(お先に失礼します)と言うため、そのまま英語にしたものが定着してしまったのでしょう。日本でも先に帰る人が「お先に失礼します」と言う習慣があるので、日本人が聞いてもあまり違和感はないかもしれません。しかし、 “I’ll go ahead”をこのような意味で使うのはフィリピン特有の用法です。
4. “Gets.”
こちらはかなりカジュアルな、タグリッシュの一種とも言える表現。標準英語では 「わかったよ」という意味で“I get it” または“I got it”というところを、フィリピンでは “Gets.”と言います。「わかった?」という意味で “Gets mo?” 「わかったよ」という意味では “Gets ko na.” というようにフィリピン語に組み込んだりもします。逆に「わからない」という時は “`Di ko ma-gets.”と言います。つまりフィリピン語で正式には “maintindihan” “naintindihan”(理解する・した)という語を “gets”に入れ替えて使っているのです。
フィリピンでしか通じない英語の語彙や、特有の用法について2回に渡りご紹介しました。フィリピンで英語の古い言い方が残ったものもあれば、新しい意味や使い方が生まれたものもあります。いずれにしても所や時代により、言葉が人から人へと伝播し、変化していくのは大変興味深いですね。