【フィリピノ・ワールド】フィリピン英語 (前編) Filipino English

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2022年9月8日

 

 

 みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピンは英語が通じる国として知られていますが、実はフィリピンでしか通じない特殊な英語表現があります。「トイレ」を表すCR (Comfort Room)がその代表的な例と言えるでしょう。これは本来アメリカで使われていた言葉がフィリピンに輸入され、アメリカで廃れた後もフィリピンだけに残った言葉です。今回はこのようにフィリピンでしか通じない英語の例を紹介します。

 

1. Traffic(トラフィック)

 

 フィリピンでは毎日聞く言葉ですね。これは「交通渋滞」という意味で使われます。標準英語とされるイギリス英語やアメリカ英語では交通渋滞はtraffic jamで、trafficは単に「交通」という意味です。

 

 

 

2. Commute (コミュート)

 

 これはフィリピンでは「自家用車ではなく公共交通機関を使って通勤する」ことです。例えば “I commute to the office every day.”とフィリピン人が言ったら「私は毎日オフィスに(公共交通機関で)通勤している」という意味になります。 しかし標準英語ではcommuteは単に「通勤する」ことで、自家用車を使っての通勤もcommuteです。

 

 

 

3. Eat-all-you-can(イート・オール・ユー・キャン)

 

 これは「食べ放題」のこと。コロナ禍前には食べ放題のビュッフェがはやっていて、看板などに必ず書いてありましたね。標準英語では “All-you-can-eat buffet”といいます。 “Eat all you can” では「できる限り食べろ」という命令になってしまって、「食べ放題」という意味にはなりません。

 

できる限り食べろ、食べたいだけ食べろ?

 

 

 

4. Bottomless(ボトムレス)

 

 こちらは「飲み放題」のこと。Bottomless iced tea(アイスティー何杯でもおかわり無料) などの言い方がよく使われます。しかし、bottomlessは標準英語では「(容器などの)底が無い」こと、あるいは「下半身に衣類を身に着けていない」ことです。標準英語でドリンク飲み放題は “free refills” または前述の例と同様、 “all-you-can-drink bar” のように使います。

 

 

 

5. Nosebleed(ノーズブリード)

 

 こちらは比較的最近使われるようになった表現です。Nosebleedと言えばもちろん鼻血のことですが、日本の中高年が考える「鼻血ブー」とは意味が違います。フィリピン人は外国人と英語で話している時、いきなり “Nosebleed!”と言うのです。普段英語で話していないフィリピン人がいきなり英語だけで話そうとすると、頭を使いすぎて言葉が出てくる代わりに「鼻血が出てくる」のだそうです。フィリピン人同士ではフィリピン語(タガログ語)と英語が混ざったタグリッシュ(Taglish)で話すことが多いので、普段から英語を使い慣れていない人は英語を話すのに苦労するのですね。

 

 

 今回はフィリピンでしか使われない特殊な英語表現について解説しました。
 これらのフィリピン英語 (Filipino English)は “Filipinism”(フィリピニズム)とも呼ばれ、使うべきでないと考えられてきました。しかしカナダにはカナダ英語が、インドにはインド英語があるように、現在ではフィリピン英語も広義での英語のバリエーションの一つであり、フィリピン英語が必ずしも悪いとは考えられなくなってきています。このような違いを知ることは興味深いですが、知らずに他の国の人に使うと変な印象を与えてしまうかもしれないことも頭の隅に置いておくと良いでしょう。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia

 

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