首都圏パラニャーケ市バクラランといえば、大きな教会とその周囲に広がるマーケットが有名なエリア。一時期は規制されて露店が減ったこともあったが、今はすっかり元の姿に戻ったようだ。教会の前や横には主に衣類や靴などを売る店が集まっているのに対し、教会裏にはストリートフードの屋台がズラリと並び、多くの人でにぎわう細い一本道がある。
定番の屋台&多国籍な料理
その道の名前が書かれた標識も見つからず、なぜかグーグルマップにも表示されない。屋台のスタッフに聞いてもわからず、何人かに聞いてようやくファーザーズ・レーン(Father’s Lane)と教えてもらえた。神父の小道とでも和訳できるだろうか。教会の近くにある道らしい名前である。
ちょうど1年ほど前に来たときより屋台が増えている。多くの人が長さ30メートルほどの1本道を食べ歩く様子は、以前紹介したマニラ市トンドのウッグボ(Ugbo)を彷彿させる。
イニハウ、パレス、ブラロといったおなじみのフィリピン料理が安い。パレスは65ぺソ、ブラロも90ペソから楽しめる。ミンダナオ地方のムスリム料理パスティル(Pastil、35ぺソ~)があるのも珍しい。店の人に聞くと、「私たちはムスリムではないけどね」と笑う。バングラデシュ人経営のハラル料理の店も数軒ある。キリスト教会の近くで、ムスリム料理が売られているのもユニークであり、平和である。
フィリピン料理以外にも定番のストリートフードであるたこ焼き、ピザ、ハンバーガー、小籠包、韓国料理、インド料理、タイ料理なども売っていて、プチ・インターナショナルなエリアだ。
持ち物には常に注意を
ファーザーズ・レーンの屋台は基本的に毎日午前9時から午後11時まで営業している。週末や休日は夜が更けるにつれて混雑し、店によっては行列を覚悟しなくてはならない。なお、くれぐれもスリに気を付けたい。5月中旬の日曜日の夜8時頃、筆者に同行したフィリピン人の知人は、財布とスマートフォンを盗まれた。私と別行動をしていて、小さなバックパックを用心して体の前に持っていたのだが、ほんの少しの間、後ろに背負ったときに抜き取られたらしい。スリの被害を届け出るためにバクラランの警察署に行ったところ、ほかにも数名が被害を届けに来ていたという。被害届を出しても、盗まれたものが戻ってくる可能性は低いだろう。教会の近くで窃盗を働く不届き者に、天罰が下ることを祈る。
屋台街は今後もマニラで増えるのかもしれない。どこも同じではなく個性があって、いつかストリートフードから新しいフィリピンの名物料理が生まれることを期待したい。(T)
(初出まにら新聞2024年5月18日号)