【北の町バギオから】文武両道バギオ大学出身のオリンピックボクサー

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2021年9月29日

 

 フィリピンではほぼ中継がなかったため、東京オリンピックがどんな盛り上がりだったのか、まったく蚊帳の外だった。世界の人のためのオリンピックなのだから、どうにか世界中の人がすべての競技を無料で見られるようにならないものだろうか?

 

 

 フィリピンからは19名が東京オリンピックに参加。女子重量挙げでヒディリン・ディアス選手が史上初の金メダルを獲得して大きな話題となった。ディアス選手以外でも、ボクシングで銀メダル2個と銅メダル1個の計3個を獲得した。さすが世界に名をとどろかせるチャンピオン、マニー・パッキャオの国である。それにしても参加した19名中4名がメダル獲得とはなかなかの好成績ではないか。

 

 

 ボクシングの代表選手4名のうち、銀メダルを取ったネスティ・ペテシオ 選手(女子フェザー級)はダバオ市、カルロ・パアラン選手(男子フライ級)はカガヤン・デ・オロ市、銅メダルのエウミール・マーシャル選手(男子ミドル級)はサンボアンガ市といずれもミンダナオ島の出身。そしてメダルを逃したが検討したアイリッシュ・マグノ選手(女子フライ級)はイロイロ市の出身である。

 

バギオ大学のフェイスブックページより

 

 

 ボクシング好きのフィリピンの人たち。さぞかし出身の町々では盛り上がったことだろう。実はここバギオでも、このフィリピン代表選手のボクサーたちの活躍に沸いた。4名の代表選手すべてが、私立バギオ大学の学生だったことがあるのだ。銀メダルのペテシオ選手とマグノ選手はバギオ大学を卒業、やはり銀メダルのパアラン選手はバギオ大付属高校の卒業生、そしてマーシャル選手も一時期同大学に在籍していた。オリンピックに4名出場で3つのメダルの獲得の快挙に、バギオ大学関係者や卒業生、在校生たちはSNSなどで喜びを表した。ペテシオ選手とパアラン選手はバギオ市政府から名誉市民として表彰もされた。

 

 

名伯楽と大学の支援

 

 それにしても、なぜ南部出身のボクシング選手たちがバギオ大学なのか? 背景に、元アマチュアボクサーで、フィリピン・ナショナル・チームのコーチを務めていたグリセリオ・カトリコJr.氏(Glicerio Catolico Jr.)の存在がある。

 

 

 バギオ大学はスポーツで知名度を上げようと、「コーチ・ボーイ」の異名をもつカトリコ氏をボクシング・チームのコーチとして採用。才能あるボクサーの卵たちが、彼を追ってバギオ大学にやってきた。カトリコ氏は2017年、ベトナムのボクシング・チームのコーチとして招聘されバギオ大学を去ったが、東京オリンピックで活躍した4人のボクサーたちは、カトリコ氏の教え子たちだったのだ。

 

ボクシングコーチのカトリコ氏。バーハム公園での無料指導にバギオ大学時代の教え子も協力してくれているという。(写真:カトリコ氏提供)

 

 

 バギオ大学がスポーツ奨学金を支給し、アスリート育成に力を入れていることも、ボクシングの有力選手がバギオ大学を選んだ理由の一つだ。現在はフィリピン空軍に在籍しているマーシャル選手は銅メダル獲得後にバギオ大学にこうビデオ・メッセージを送った。

 

 

「バギオ大学はボクサーとしての私たちの状況を理解し、必要なサポートをしてくれた。この大学で学んだことを誇りに思う」。

 

 

 バギオ大学の国際ホスピタリティ&観光マネージメント学部を卒業したペテシオ選手について、バギオ大学ボクシング・チームの現コーチのマーティ・オダシン氏は、バギオ大学のブログの中でこう言っている。

 

 

「ペテシオ選手は実習をきちんと終え、学位を取得した。学業とボクシングを両立させるのは簡単ではないが、彼女は正規の学生として学位を取得した」。

 

 

 ほかにもバギオが強いボクサーたちを生む理由として、標高1,500メートルにあり高地トレーニングに適していることが挙げられる。パッキャオもトレーニングのためにたびたびバギオを訪れていた。

 

名コーチが公園で無料指導

 

 

 さて、バギオ大学でオリンピック選手4人を生んだ名コーチ、カトリコ氏は現在どうしているのか気になって、バギオの地方紙に記事を探してみた。

 

 

 なんと、カトリコ氏、ベトナムから帰国し、バギオ市のバーハム公園で健康のために様々な格闘技を楽しむグループ「Team Lallakay (チーム・ララカイ=長老チーム) 」に、毎土曜日に家族とともに参加し、アマチュアボクサーたちに無料指導しているという。「長老チーム」は、COVID-19の感染で外出が減り運動不足に陥っている人々に体を動かす機会を与えようと、昨年末に移動規制が緩和されるとともに活動を再開。いまでは、発起人の「長老」たちだけでなく子供から70歳代までが参加する格闘技愛好グループに成長している。次のオリンピック選手は、土曜日のバーハム公園から生まれるかもしれない。

オリンピックでのフィリピン・ボクシングチームの活躍で、バギオのフィットネスジムでもボクシングが人気沸騰中! 若い女性も多い。

 
 
 
 

反町 眞理子

環境 NGOコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network / CGN)代表。Kapi Tako Social Enterprise CEO。山岳地方の先住民が育てた森林農法によるコーヒーのフェアトレードを行う社会的企業を運営。

Yagam Coffee オンラインショップ https://www.yagamcoffeeshop.com/

コーディリエラ・グリーン・ネットワーク  https://cordigreen.jimdofree.com/