「魔法」が生んだクラフトビール Brujo at the Alley

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2024年2月9日

マカティに点在するダイニングエリアでも、「知る人ぞ知る」「洗練された」という表現が当てはまるカリビンプラザ。都心から少し足を延ばして訪れる価値ありの魅力的な飲食店が立ち並ぶ。その中で、ビール党ならぜひ訪れたいクラフトビール専門店が「Brujo」(ブルホ)だ。

 

クラフトビールの製造過程はマジック

 

 

 カリビンプラザ内のアレイ(the Alley)と名付けられた一角の入口に現れる、コンクリート打ちっぱなしの壁をくり抜いてつくったようなカウンター。バーチェアに座って飲むのはもちろん、近くのベンチに腰を下ろしてくつろいだり、立ったまま飲んだり。ブルホを訪れたファンがグラス片手に思い思いのスタイルで楽しんでいる。

 

Brujo at the Alley Karrivin Plaza, Chino Roces Ave., Makati City 営業時間:火~土曜日5pm~11pm  日曜日12nn~7pm(ポップアップ屋台がある場合)

 

 ブルホのブリュワーは、ニール・オオシマさん。多くのクラフトビール・ブリュワー同様、ニールさんも自宅でのホームブリューイングから始めた。

 

 

 「実は最初フィリピンで日本酒を作ろうとしましたが、あまりに難しくて断念し、クラフトビールをつくるようになりました。原料のホップ、水、麦芽、そして酵母の働きによって実にさまざまな味のビールをつくり出せる。フルーツなど副原料で個性を出すこともできる。クラフトビールの製造過程はマジック、まさに魔法のよう。だから、この店をブルホ、タガログ語で『魔法使い』と名付けたんです」

 

ニール・オオシマさん(右)。ニールさんはフランスのブルゴーニュ地方シャブリでもクラフトビールをつくっている。左は常連客のアイバー・アルダスさん。

 

 

フィリピンの米と日本の麹を使って

 

 

 IPA(インディア・ペール・エール)は1週間、ラガーは3週間をかけてつくる。現在、生のクラフトビールは6種類。筆者が訪れた1月中旬、クラフトビールバーではおなじみの黒板にチョークで書かれたメニューの一番上にあったのは、ブロンドエール(5%)。ニュージーランド産ホップを使用し、柑橘のさわやかさとほのかな苦味、飲みやすく今宵の最初にふさわしい1杯。

 

 

クラフトビールのメニューは変わるので、訪れた日にどんなビールに出会えるかはお楽しみ。(写真は1月中旬取材時に撮影)

 

 次にベルギースタイルのウィートビール(白ビール)「ビエール・ブランシェ」(5%)。オレンジピールの爽やかでフルーティーな味わいだ。ベルギーのホワイトビール、ヒューガルテンの生にマニラで出会えず残念に思っている方は、ここに来てぜひビエール・ブランシェを試していただきたい。

 

 ニール・オオシマ氏に自信作、シグネチャービールを挙げるとしたら? と聞くと、う~~~んと熟考した後に、ブラック・ライス・ラガー(5%)との答え。フィリピン産黒米、そして麹(こうじ)を使ったユニークなビール。グラスを口に近づけると漂ってくる香り、口に含むと広がる豊かで何層にも連なるような深さ、それでいて軽快。そんな奥行きのある味わいが楽しめる。フィリピンの米と、日本伝統の麹によってつくられる「フィリピンと日本の友好醸造ビール」と呼びたい。

ビールサーバーにはイフガオ地方の米の守り神ブルルの像が。

 

 ブルホでは、ニールさんイチオシのクラフトビールに合うつまみとしてニューヨークスタイルのピザを用意。米国ニューヨーク・マンハッタンのグリニッジビレッジ生まれのニールさんのこだわりが見える。日曜日には昼からオープンし、メキシカン、パエリア、オイスターバーなどのポップアップ屋台も登場する。 

 

 1日の終わり、マカティの喧騒を離れてラガービールをあおる。週末のブランチに、ウィートビール、エールビールを飲み、タコス、ケサディヤをほおばる。やはりクラフトビールは魔法の産物に違いない。飲めば、私たちを幸せにしてくれる魔法である。(T)

 

 

(右上と左下)マカティのメキシコ料理店「A’ Toda Madre」のポップアップ屋台(1月14日)の本格的なメキシカン・タコス。(右下)モダン・ヨーロピアン料理店「The Black Pig」のパエリアのポップアップ(1月28日)。

 

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