蝶谷 正明(セブ日本人会)
セブもマニラ同様、ショッピングモールが供給過剰と思われる今日この頃です。しかし、内部のテナントの入れ替わりはあってもモール自体が閉店したという話は聞きませんから、フィリピン経済は健全に成長しているのでしょう。アヤラ、SM、メトロなどの全国的な巨大チェーン、ビサヤ限定ローカルのガイサノ、そして増殖している小規模モール……。フィリピンは言わずと知れた階級社会です。セブのモールにもヒエラルキーが存在します。階層によりどのモールに行くという暗黙の了解があるようです。自分はどこが気楽に時間を過ごせるかということです。日本でもかつて歳暮や中元は送り先に合わせた百貨店で用意したものでした。包装紙が大切だった時代です。
セブの最高峰はハイエンドを対象にしたアヤラセンター内のルスタンス。いつ行っても明らかにお客よりスタッフが多いです。敷居の高さはひしひしと感じられます。日用品、電化製品、キッチン用品などのフロアとスーパーを探索すると、ほぼ全てが輸入品、見たことのない家電や使い方や用途不明の道具など興味が尽きません。高級ブランドの陶磁器や食器類なども目を楽しませてくれます。スタッフも暇ですから適当に相手をしてくれます。
2番手はマニラのグリーンベルトの縮小版アヤラセンター。ルスタンスが入るまでは最高級でした。アヤラセンターのITパーク店はIT企業で働く若者が対象ですから、ずっと庶民的です。かつてはアヤラはSMシティよりも高級ショッピングモールという感じがありましたが、約10年前にSMシティにノースウィングがオープンしてからSMシティが差を縮めているように感じます。シーサイドも幅広い層のテナントが入り、スケートリンクや隣接した水族館などの相乗効果が出てきたようです。来年はマクタン島と結ぶ第3ブリッジがモールの前に開通します。メトロもSMと同じレベルでしょう。セブを本拠としてビサヤ全域に展開しているガイサノはやや低所得層の庶民にターゲットを絞り込んでいます。アヤラやSMに比べてローカル色が強い品揃えや価格帯などは観光客には興味深いものがあります。小規模モールはこじんまりとしていますが、お洒落なカフェやレストラン、スパなどが入っています。
ITビジネスの進展により中間層とその予備軍が急増し、以前に比べてヒエラルキーがゆるくなりつつあるセブ。とは言え、日本に比べればまだまだ根強いものがあります。その中で、我々外国人は様々なモールに足を運び自由に好奇心を満たすことができています。