蝶谷正明(セブ日本人会)

 

 コロナ禍によるロックダウンを経て、やっと光が見えてきたと思ったら昨年末に台風オデットが襲来。そして、ウクライナ情勢などによる物価高騰。よくもまあ、次から次へといろいろ起こるものです。

 

 2年前、ロックダウンになるぞという頃、セブ在住の一部邦人の間で暴動や強盗に備えて自衛用に銃を持とうという話がありました。特に当地の事情に詳しい人たちが危機感を募らせましたが、フタを開けてみると何も起きませんでした。台風直後も日本人は電気がない、ネットが使えないと騒いでいたような。

 

 昨今の物価高騰に対しても、地元の低所得層の人たちはどうやって生きていくのか心配になりますが、我が家のヘルパーたちは給料を上げてくれなどとは言ってきません。先日、ドライバーが急病になった時も治療費の援助を妻と相談していましたが、本人曰く、田舎で飼っているカラバオ(水牛)を売るから大丈夫とのこと。コロナ禍でお金を使わなかったので、水牛3頭とDIYで家を建てるためのブロックも買えたそうです。

 

 セブの街中を見ると高層ビル建築用のタワークレーンが元気に動いていますし、新規オープンの飲食店も目立ちます。スーパーやモールもにぎわっていますし、値段はともかく物は豊富。台風の傷痕はまだまだ目に付きますが、その隣では地元の人々が明るく、たくましく生きています。セブの人々は、つくづく日本人とは異なる価値観の持ち主だと感じます。

 

台風オデットの被災から半年を経て、やっと修理が始まったショッピングモール

 

 100年前の関東大震災直後、当時東京にいた外国人が、家族や家を失った日本人が実にあっけらかんとして、翌日にはバラックを建て始めているのを見て驚愕したと読んだことがあります。戦後の復興もまた然り。物質的に豊かになるにつれ、人間が本来持っていた明るさやたくましさが失われていくのかもしれません。