【セブ通信】街が変貌する「雨後のタケノコ」

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2022年9月9日

 

 

 

 2007年、セブに移住した頃のこと。セブ市内で高層ビルと呼べるのは、アヤラビジネスパークの日本領事館が入居していた建物を含めて2、3棟くらいでした。ITパークにはさすがに10数棟あって威容を誇っていましたが、どちらも手付かずの空き地が圧倒的に多かったものです。20〜30年後にはある程度ビルが建つだろうと、誰もが将来の発展に思いをはせていました。高所から市内を見渡せば、まばらに立つ高層ビルよりも緑の木々と赤茶けたトタン屋根が目立つ、まさに途上国の街の風景がありました。

 

 それが今では、雨後のタケノコとはまさにこういう時に使う例えだと実感します。世界経済がリーマンショックから立ち直った頃から、セブはコロナ禍も台風もどこ吹く風の急成長を遂げています。インドに並ぶ(?)世界的BPOセンター(Business Process Outsourcing) の地位を獲得し、英語学校ビジネスが急増を遂げた時期と合致します。ビジネスチャンスの爆発的な増加に伴い、日本人、韓国人をはじめ外国人をターゲットにしたコンドミニアムも着工前に完売。コロナ禍直前はオフィスビルも需要に供給が追いつかない状態でした。

 

 

今まで高層ビルがなかった地域にも大規模なホテルが建築されている。

 

 

 ビジネスパークやITパークが立錐の余地無しの状態になれば、これまで高層ビルや先端ビジネスとは縁のなかったスクワッター(不法居住地域)や、荒地でも建築ラッシュが起こります。先見の明のある金持ちや企業は、こういう日が来ることを見込んで、見向きもされなかった土地を何十年も前から買い占めていました。

 

 セブ島本体は石灰岩でできており、昔からセメント製造が盛んでしたが、この建築バブルでセメントが島内の需要に追いつかないとも聞きます。南国の緑の楽園が、無機質なビル群に姿を変えていくのを見るのはやはり寂しいものがあります。

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