【フィリピノ・ワールド】季節風アミハンとハバガット

この記事をシェア

2021年7月8日

 

 

 みなさん、こんにちは!Kumusta kayo?  フィリピン気象庁(PAGASA)が6月4日に今年2021年の雨季入りを宣言しました。やっと猛暑の時期が終わり、少しは涼しくなるかと思うとほっとしますが、またジメジメとした雨の季節が半年も続いて、あちこちで洪水が起きるのかと思うと、それはそれでうっとうしい気分になりますね。

 

2020年10月末、台風19号(フィリピン名ロリー)により冠水したパンパンガ州マカベベの道路。(Photo: Judge floro CC0 1.0 from WikimediaCommons)

 

フィリピンの季節を決める風

 

 フィリピンの気候は、季節風(モンスーン)によって影響されます。南西季節風Habagat(ハバガット)と北東季節風Amihan(アミハン)のどちらが吹いているかで季節が変わります。

 

 6月から11月にかけては南西季節風ハバガットが吹き、フィリピンの南西の赤道付近の海上から暖かく湿った空気が流れ込むため、フィリピンの西側で雨が降ります。これをtag-ulan(雨季)と呼びます。またこの時期は赤道付近の太平洋で水温が上昇するため低気圧が発生し、モンスーンのもたらす湿った空気を吸い込んで台風へと発達し、フィリピンや日本に大雨を降らせます。

 

 北半球の冬にかけてアジア大陸の気温が下がってくると、そこで下降気流が発生し、その冷たい空気が日本を超えて南東の温かい太平洋側へ向かって流れ込みます。いわゆる西高東低の気圧配置です。その風は日本を超えたあたりから、アジア大陸のカーブに沿うような形で西へ向かって蛇行し、フィリピンの北東から南西へと流れ込みます。これが北東季節風アミハンです。この時期にはフィリピンの東側には雨が降りますが、西側は乾季(tagtuyo)となります。このようにフィリピンの西側は雨季と乾季が比較的はっきりと分かれた熱帯モンスーン気候ですが、ルソン島の東側からミンダナオにかけては、年中雨量が多く、アミハンの時期には若干雨量が減る程度なので熱帯雨林気候に分類されます。

 

 

季節風にまつわる2つの伝説

 

 

 このアミハンとハバガットはフィリピンの伝説にも登場します。天を司る神Bathala(バッハラ)と海を司る神Aman Sinaya(アマン・シナヤ)はいつも争っていました。アマン・シナヤが嵐を天に送り込んだことにバッハラは怒って大きな岩を海に投げ込み、それがフィリピンの島々となりました。

 

 その様子を見た北東季節風アミハンは、鳥に姿を変えて天と海の間を飛び交い、2人を和解へと導きます。バッハラは和解の印として種を送り、その種から竹が生えます。竹の中から声がするのでアミハンがつつくと、2本の竹からそれぞれ最初の男性Malakas(マラカス=「強い」)と最初の女性Maganda(マガンダ=「美しい」)が産まれます。その後マラカスとマガンダは何千人という子孫を持ち、それが人類の祖先となったというのがフィリピン版の天地創造伝説です。

 

 また別の伝説では、天と雨を司る神ハバガットが、海を司り漁民を守る美しい女神アミハンに一目ぼれします。ハバガットはアミハンを勝ち取るため他の風を司る神々と競い勝利します。ハバガットはアミハンを天上の宮殿に招き入れ、それ以来2人で協力して風を支配するようになったという話です。

 

 時に大雨の被害をもたらす季節風ですが、吹かなければ雨も降らず農作物も育ちません。フィリピンの人々は昔からこの季節風の変化から季節の移り変わりを感じ、農耕の時期を知り、恵みの雨に頼って暮らしてきました。自然に対する畏敬の念が、これらの伝説に反映されているといえるでしょう。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia