【フィリピノ・ワールド】マリテス、マリサ? Marites, Marisa?

この記事をシェア

2022年7月4日

 

 

 

 みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? 今年の5月、統一選挙後の12日に定例テレビ会見でドゥテルテ大統領は「うわさ話が聞きたければ、たくさん(ネタが)ある。いろんなのがな。今のフィリピンはマリテス共和国だから。(This is a republic of Marites na ngayon eh.)」と発言しました。いったいどういう意図の発言か、わかりますか?

 

 

今のフィリピンは・・・・・・

 

 実はフィリピンで最近流行しているのが、Marites(マリテス)とかMarisa(マリサ)等、Mariで始まる女性の名前です。フィリピンではMariで始まる名前が非常に多くありますが、これらが2020年ごろから特別な意味で使われるようになり、TikTokなどのSNSを通して拡がりました。

 

 Marites (マリテス)は “Mare, ito ang latest.” (マーレ、最新情報はこれよ)を省略したもの。Mare(マーレ)というのは親しい女友達に対する呼称です。つまり「最新情報はこれよ」と、うわさしたがる人のことだそうです。フィリピン語でうわさ好きの人のことはtsismosa(チスモーサ)といいますが、「マリテス」を始めMari…で始まる女性の名前が「チスモーサ」「うわさ好き」あるいは「うわさ話をすること」という意味で使われているわけです。つまりドゥテルテ大統領の発言は「今のフィリピンはうわさ好き共和国だ」という意味だったのです。

 

 マリテスの「仲間たち」と言われる、Marisa(マリサ)は “Mare, isa pa.”(マーレ、もう一つあるよ)から。こちらはうわさ話にさらに尾ひれを付けて拡げる人のこと。Marina(マリナ)は “Mare, ano na?”(マーレ、どうなった?)Maricon(マリコン)は “Mare, confirmed.”(マーレ、うわさの通りよ)。Marinela(マリネラ)は “Mare, anong sabi nila?”(皆はなんて言ってた?)となるのだそうですが、そのままだとMarenilaのはずですよね? フィリピン語ではこのように iとeが入れ替わる現象がよくおきます。また、うわさ話をするだけでなくSNSに「投稿しなさいよ」と言うタイプのチスモーサはMariposa(マリポーサ)と呼ぶそうです。その意味は “Mare, post mo na!”(マーレ、投稿してよ!)。

 

 

うわさ好きの男性

 

 さて、ドゥテルテ大統領曰く「みんなうわさ話をしている。男も女も。昔は女だけだったが」。昔は女だけがうわさ好きだったのかどうかはともかく、うわさ好きの男性(チスモーソ)についてもマリテスに対応する呼び名があります。若い男性に対してはTol(トル)という呼び名がよく使われますが、Tolits(トリッツ)は”Tol, ito ang latest.”(トル、これが最新情報だよ)の略だとか。また、Antonio(アントニオ)は “Ano, Tol, kita ‘nyo?”(ほら、トル、見てみろよ)、John(ジョン)は “Nakita ko sila d’yan!”(あの人たちをそこで見かけたよ)、つまり「そこで」という意味のd’yan(ジャン)と名前のJohnをかけているわけです。

 

 

うわさ好きの皆さん

 

 テレビのニュースや、SNSでもインターネット・ミーム(ネタ画像)として拡散されている「マリテス」と「仲間たち」ですが、調べてみると一般の人たちが実際に使っているのはマリテスとトリッツくらいでそれ以外はあまり出てきません。 “mga Marites” (そこのうわさ好きの皆さん)と複数で使われる場合もあれば、「うわさをする」という意味の動詞にもなります。例えば、5月の選挙の直前には選挙管理委員会のガルシア委員長が “ ‘Yong mga boboto, wag mag-loiter pa. Mag-“Ma-marites” pa kasi ang iba.”「投票する人はウロウロしないでください。マリテスする(うわさ話をする)人までいるから」と選挙後のうわさ話について注意喚起をしていました。

 

 フィリピンの選挙もデマや誤情報による影響が少なからずありました。不確かな情報がまるで感染症のように大量に拡散し、社会的影響を及ぼすことを「インフォデミック」(英:infodemic)と言いますが、フィリピンに限らず、根拠のない噂話はとかく広がりやすいものです。間違った情報や他人を傷つけるようなうわさを拡散しないように気をつけたいものですね。

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia

 

 

 

Advertisement