フィリピノ・ワールド 防疫下の動物たち

この記事をシェア

2020年9月7日

 みなさんこんにちは!Kumusta kayo?   先頃ケソン市のあるビレッジ内で珍事件が起こりました。2羽のダチョウが脱走し、ビレッジ内を疾走する様子をとらえた動画がSNSで話題になったのです。動画では犬の鳴き声が聞こえているので、てっきり犬に追いかけられているのかと思ったら、なんとヤギに追いかけられていたんですね。同じ日には、セブではブタが、イロイロでは牛が脱走し、道路を逆走する事件も起こりました。いやはや様々な動物が脱走した1日でした。

 

 フィリピンでは、ブタや牛はそれほど珍しくはありませんが、さすがにダチョウは街中で見かけるものではありません。ユーモラスなダチョウの姿は、ロックダウン疲れのフィリピンの人たちに笑いを提供してくれました。しかし残念なことに、捕獲されたダチョウのうち1羽は翌日ストレスで死んでしまったそうです。飼い主はダチョウを埋葬するようにと世話係に指示したそうですが、その世話係は、そのまま埋めてしまうなんてもったいないと、なんとダチョウをアドボにして食べてしまったんだとか。なんともフィリピンらしい話と言えばそうなのですが、かわいそうな結果になってしまいました。ちなみにダチョウはフィリピン語での呼び方が無いので、英語のままでostrich(オーストリッチ)と呼びます。

 

 フィリピンには動物を用いた表現がたくさんあります。「動物」は “hayop”(ハヨップ)と言いますが “Hayop ka!”と言えば「お前はケダモノだ」という罵倒の言葉になります。 しかし“Hayop na ganda”(ganda=美しい)のように形容詞と組み合わせて使うと、今度は「非常に」という強調表現になるので「すごく美しい」という意味になります。ちょっとスラング的な表現なので「チョーきれい」といった所でしょうか。「動物」といっても必ずしも哺乳類とは限らず、昆虫や爬虫類も全てhayop”と呼ばれますが、昆虫は英語insectからフィリピン語で“insekto”(インセクト)とも言います。これを人に対して使った場合は、「非常に汚らわしいケダモノ以下」という意味になります。 

 
 ブタはフィリピン語でbaboy(バボイ)と言います。皆さんも「レチョン・バボイ(ブタの丸焼き)」「シニガン・ナ・バボイ(ブタのシニガン)」などで聞いたことがあると思います。しかし“Parang baboy kumain”と言えば、「ブタのように食べる」、つまり「食べ方が汚いこと」という意味になります。またブタにはなんでも踏みつけてグチャグチャにする性質があることから、baboyを動詞として用いると「ぞんざいに扱う」「無茶苦茶にする」と言う意味になります。たとえば“Binaboy niya ang kotse ko”と言えば「彼は私の車を(ぞんざいに扱って)グチャグチャにした」という意味です。

 

 

 子犬はtuta(トゥタ)といいます。子犬と言えばかわいいものを想像しますが、フィリピン語で“tuta ng ~”と言えば、「誰かの子分に成り下がっている」という意味になります。日本語でも「~のイヌ」と言う言い方をしますが、それと似た表現ですね。ちなみに成犬はaso(アソ)です。日本人は「ああ、そうか」と良く言いますが、フィリピン人には “aso ka(あなたは犬だ)”と聞こえてしまうので気をつけましょう。

マニラ・オーシャンパークのワニ

 さて、最近ニュースをにぎわせているのは、フィルヘルス(フィリピン保健公社)の役員らが不正支給に関わっていたとする問題です。調べによると、既に死亡した患者への医療費支給が続けられている等、30億ペソ相当の額が不正に利用された可能性があるとのこと。フィリピンでは権力を利用して私腹を肥やす貪欲な人を「ワニ」という意味でbuwaya(ブワヤ)と呼びますが、これが本当だったらまさにブワヤの仕業です。しっかりと調査して処罰してほしいところですね。

 

 

文:デセンブラーナ悦子
日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人の夫と1992年に結婚、以後マニラに暮らす。趣味はダンスだが、最近は時間が取れないのが悩み。

 

 

 

 

Advertisement