【フィリピノ・ワールド】デレッチョ・ラン!(真っすぐ行って!)

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2021年10月7日

 

スペイン語由来のフィリピン語

 

 みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? この「クムスタ?(元気?)という挨拶は、スペイン語の挨拶¿Cómo está?から来ています。フィリピンは300年以上もスペインの植民地だったので、語彙の20~30%がスペイン語由来だとも言われます。

 

 1940年にタガログ語のアルファベット「アバカダ」ができた際に、スペイン語の綴りもアバカダに統一され、cはk、choはtso、ieがyeになるなど、綴りは変えられましたが、そのまま定着している語彙も多くあります。例えば車を表すkotse(コチェ)はスペイン語のcocheから、「おやつ」を表すmeryenda(メリエンダ)はmeriendaから来ています。

 

あの地名も?

 

 地名にもスペイン語から来ているものがあります。Los Baños(ロス・バーニョス)は「浴室」の複数形です。温泉地であることから来ているのかもしれません。Las Piñas(ラス・ピーニャス)はパイナップル。昔は産地だったのかもしれませんね。

 

 フィリピン最大の湖、ラグナ湖のlagunaとはラグーン、潟湖(せきこ)のこと。しかし正式名称はLaguna de Bayです。このBayは英語の「湾」ではなく、「バイ」という地名です。つまりラグナ湖ではなく「バイ湖」が本来の名称です。しかし今ではフィリピン人もLake Laguna(ラグナ湖)と呼んでいます。長く使われるうちにこちらの方が一般的になってしまったというわけです。

 

 

意味が変わった言葉も

 

 フィリピン人が「もちろん!」と言う時は “Syempre!”(シェンプレ)と言います。しかし実はスペイン語のsiempreは「いつも・いつまでも」という意味です。またフィリピン語で「了解」とか「じゃあね」という意味で使う”sige”(シゲ)は、スペイン語の “sigue”から来ており、「続けて/続け」という意味です。そしてsiguro(シグーロ)はフィリピン語では「たぶん・おそらく」ですが、スペイン語のseguro(セグーロ)は「確実に」という意味です。さらにフィリピン語のalmusal(アルムサル)は朝食のことですが、スペイン語のalmozar(アルモサール)はなんと昼食なのです。昔のスペイン人とフィリピン人の間でどんな会話が交わされて、こういう意味の違いが生じたのだろうと想像してしまいますね。

 

 

 食べ物の名前も、フィリピンではスペイン語とは全く違う物を示す場合があります。例えばフィリピンでturon(トゥロン)と言えば、バナナの揚げ春巻きですが、スペインで turrónはナッツの入った飴のこと。tocino(トシーノ)と言えばフィリピンでは甘く味付けした豚肉のことですが、スペイン語のtocinoはベーコンのこと。野菜炒めなどの炒め物はフィリピンではgisado(ギサード」と言って、gisa(ギサ)を活用させginisa(ギニサ)という呼び方もしますが、スペイン語のguisado(ギサード)は、煮込み料理のことです。

 

(左上)スペインのtocino(右上)フィリピンのtocino (左下)スペインのturrón(右下)フィリピンのturon

 

変わった使い方

 

 「真っすぐ行って!」は、フィリピン語で“Deretso lang!” (デレッチョ・ラン!)と言いますが、このderetsoは、スペイン語のderecho(デレチョ)から来ています。フィリピン語では「ずーっと、ずーっと真っすぐ」なんていう時には「デレ」を繰り返して“Dere-dere-deretso!”「デレデレデレッチョ!」なんて言い方もしますが、これは頭の二音節を繰り返す珍しい使い方です。

 

 

意識されない「外来語」

 

 

 日本でも「タバコ」「かるた」「金平糖」など、比較的古い時期にポルトガルから来た外来語は、外来語として意識せずに使われていますが、それと同様、フィリピン人もスペイン語由来の言葉は外来語としてあまり意識せずに使っています。

 

 言葉は物や情報と共に海を渡り、ある時は意味を変え、使い方を変えながらその地に定着していきます。言語を学ぶ楽しさはこんなところにも見出せると思います。

 

 

 

 

文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia