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言葉でめぐるアジア。未来の「国際人」へ

2020年10月5日

これまでになかったユニークな本と言えるかもしれません。1冊の中にアジア14カ国語が登場する『アジアのことば魅力旅』。著者は中原秀夫さん。日系企業駐在員としてフィリピンに20年、さらにアジア各地での異文化体験を持つ中原さんに、本書を上梓された思いについて聞きました。 (聞き手・時澤 圭一)

 

 

 

 

 

 

 

『アジアのことば魅力旅 世界で活躍する12人が語る「これからの国際人」とは?
 大きく2つの内容で構成され、第1編はフィリピノ語、中国語、台湾語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、マレーシア語、ペルシャ語、ウルドゥー語、ヒンディー語、ミャンマー語、シングリッシュ、日本語、これらアジアの14の言語の魅力を専門家や学習経験者が述べる。第2編では元大使、日系企業駐在員など12人が自らの経験を基に「国際人」について語る。現地の言葉を知ることでアジアの国々への興味を深めつつ、外国語の習得や「国際人」について考える機会を与えてくれる1冊。
出版社:三省堂書店/創英社 ISBN-13 : 978-4866591193 ISBN-10 : 4866591196 ※まにら新聞広告部(Tel:02-8551-8238)にて発売中。価格:800ペソ。

 

 

 

 

 

アジアと言語の魅力を伝えたい

 

―本書を書こうと思われた理由は?

 アジアの言葉の魅力や楽しさを多くの人に本で伝えたいという構想は、2010年頃から持っていました。取り上げた14の言語は、私がこれまで接したことがあるアジアの言語です。シルクロードが好きなのをきっかけに大学で専攻したウルドゥー語、ペルシャ語、海外営業の仕事で飛び回った東南アジア諸国の言語、20年以上暮らしているフィリピンのフィリピノ語。本書には入れませんでしたが、登山が好きなのでネパール語、技術研修派遣で滞在したイタリア語を学んだことも。これまで多くの言語に接しましたが、私の接し方の度合いが濃かったり、薄かったりといった違いがあります。

 

 本書では各言語について、専門家と学習体験者に語ってもらっています。基本的な会話表現も載っていますが、語学上達のための参考書ではありません。読者にアジアという地域と、その国で話されている言葉に関心を持ってもらい、それぞれのアジアの言語が持つ魅力を伝えたいというのが本書にこめた思いです。
 例えば、フィリピン人との会話では英語が通じますが、少しでもタガログ語で話すと喜ばれて、その場が和みますよね。このような体験ができるのも現地語の魅力であり、楽しさの一つでしょう。

 

 また、アジアの言語で魅力的だと思うのは声調です。ミャンマー語は3つ、中国語普通話は4つ、タイ語は5つ、ベトナム語は6つ、台湾語は7つの声調があります。これらは中国語の4つの声調を基本として追加で覚えればいいのではなく、言語によりそれぞれ違うのです。このような比較もおもしろい。漢字もやはりアジアの言語ならではの魅力だと思います。

 

 

語学を継続するための好奇心

 

―本書を読んで、アジアの言語に興味を持ち、習得したいと思う読者もいると思います。ご自身の経験から、語学学習に大切なことはどんなことだと思われますか?

 

 その言語を学ぶ動機付けだと思います。皆さんも経験があると思いますが、語学学習というのは、やる気に燃える時があれば、やる気が出ない時もある。そして何かのきっかけでまたやり始める。この繰り返しではないでしょうか。やはり語学を学ぶうえで最も大切なのは、学習を継続する強い好奇心を持つことです。

 フィリピンにいる日本人の語学学習者の中には、まず英語を勉強して完成させてから、フィリピノ語を学ぼうとする人がいますが、英語とフィリピノ語を並行して学ぶことをおすすめします。なぜなら英語を完成するなど到底無理で、いつまで経ってもフィリピノ語を学ぶことができなくなってしまいますから。

 

 英語の重要性は言うまでもありませんが、できれば日本人としては、お隣の国の言葉である中国語あるいは韓国語を少しでも学んでおくことも大事なのでは、と考えます。どこの国も隣国との関係は微妙なものがあります。しかし、隣国を言葉を通じて理解することで、少しでもお互いの友好関係の向上につながればいいのではと思ったりもしています。  

 

 

 

「国際人」として異文化を理解する

 

「国際人とは何か」というテーマも盛り込まれています。中原さんから見て、日本人は変わったと感じることはありますか?

 

 私は海外で暮らし、さまざまな国の人と会話する中で「国際人とは何か」を意識するようになりました。今は日本にいながら世界の情報も簡単に手に入るので、わざわざ海外に行かなくても世界がわかる、と考える人が多いのかもしれません。今さら海外に出て、物事が思うようにいかず苦労するような体験は嫌だと。日本での生活が豊かになった分、昔の人よりは冒険心を持つ人、異文化を楽しみつつ、その違いに耐えてみようという気概を持つ人は少なくなっているのかもしれませんね。 海外にいる日本人の場合、男性よりも女性の方がバイタリティーがあり、人間的にも魅力がある人が多いということは、多くの人と意見が一致するところです。

 

―どのような人に読んでほしいと思いますか?

 

 特に日本にいる若い人に読んでもらい、アジアのおもしろさに気付いてほしいと思っています。個人的に思うのは、ヨーロッパはかなり歳をとってからでも気軽に行けますが、アジアはそれ相当に刺激が強い。その分、得るものも多いと思います。なので、ぜひ若いうちにアジアでの生活を体験してほしいです。

 

 若いうちに、という年齢に関して言えば、以前ある人生セミナーで聞いて強く印象に残っていることがあります。それは「人生をおよそ2分割して考える。できれば40歳までに物事が自分の思い通りにいかず、時に挫折を経験し、耐えることを学ぶ『耐性』『逆境力』を身に付ける。そして、40歳から本当に自分がやりたいことを模索し、見つける。それに向けて自己を実現をすることができれば、すばらしく充実した人生になる!」ということ。またある時、70歳前後の仲間30人ほどの集まりで「もう一度人生を戻れるなら、何歳代に戻りたいか」という問いに、かなりの方が人生を繰り返すことができるのなら、もう一度40歳に戻りたいと答えました。ですので、特に40歳代の方も含む若い人に読んでいただきたい。そして、異文化の吸収と耐性の獲得のため、海外へ飛び出すという思いを実現する一助となればうれしいです。一方、海外に住んでいるから「国際人」ではありません。日本にいても、すでに外国人とのコミュニケーションは避けられないほどに国際化が進んでいます。やはり、日本人一人一人が「国際人とは何か」を意識してほしいと思うのです。

 

 

 

中原 秀夫 (なかはら ひでお) 1948年長野県伊那市生まれ。東京外国語大学外国語学部ウルドゥー語専攻卒業後、新日本製鐵(現日本製鉄)入社。1977年から2年間のイラン・テヘラン大学留学中にイラン革命に遭遇する。同社にて上海製鉄所建設プロジェクトおよび東南アジア諸国で海外営業に従事。1997年フィリピン新日鉄の代表としてフィリピン現地法人、ベトナム事務所開設に携わる。2018年に退職後、マカティ市にSHINANO INTERNATIONAL LANGUAGE CENTRE開校。日本語、英語、タガログ語、中国語などアジアの言語を操るマルチリンガルの育成をめざしている。フィリピン在住22年。日本山岳会、東京建築士会会員。英語通訳ガイド。「コロナ禍が終息したら、フィリピン国内ならアマンプロ、海外ならネパールへ行って山を眺めたいです」。