福岡県久留米市在住のフィリピン人映画監督ジェ-ムズ・センチュリオンさんがこのほど『久留米…愛を探す。』をクランクアップ。コロナ禍の中での撮影や、監督自身が暮らし、映画の舞台にも選んだ久留米への思いを聞いた。(聞き手・時澤圭一)

 

ジェームズ・センチュリオン監督 (James Centurion/写真中央) 1990年8月6日生まれ。ラグナ州サンタロサ市出身。  「キャストは全員俳優やモデルの経験がなく、演技をするのも映画に出るのもこの作品が初めて。クラルを演じたビエン・ロザル(Vien Lozar/写真左)、リナ役のキンバリー・ネリ(Kimberly Neri/右)のがんばりに感謝です!」

 

日本で働くフィリピン人の本当の姿を伝えたい。

 

―「久留米…愛を探す。」を撮った動機は?

 

 本作は私にとって初の長編映画です。ずっと映画監督になりたいという思いと、映画への情熱を実現するために撮りました。
 テーマは、愛する人のために自分がすべきことは何か。愛とは、相手のために自分を犠牲にすることだと言えるかもしれません。また、映画を通じて日本に住むフィリピン人が愛する家族のためにいかに苦労しているかを伝えたいと思いました。フィリピンでは、日本で暮らすフィリピン人のことを金持ちだと思って、 「Japan, Japan, sagot sa kahirapan.(日本に行けば貧困から抜け出せる)」 と言って、うらやましがります。しかし、現実は厳しく、みんな必死に働いて生活していることを知ってほしいのです。

 

―コロナ禍の影響は?

 

 福岡在住のスタッフ、キャストで今年2月から週2回撮影をし、4月に終了、5月17日に久留米シティプラザで公開予定でした。しかし、コロナ禍による緊急事態宣言が出されたために、撮影は中止。6月に再開して7月にようやくクランクアップしました。公開予定は10月18日です。フィリピンでもぜひ上映したいし、オンラインでの配信も考えています。

 

―本作のほかにどのような作品を撮りましたか?

 

 私が映画を撮り始めたのは高校生の時。『カシヤス』(Kasilyas/トイレ)という短編のホラーを撮りました。次に『リヒム』(Lihim/秘密)というサスペンス・スリラー。ホラーやスリラーを撮ったのは、当時友達と『リング』『スクリーム』『悪魔のいけにえ』 (The Texas Chainsaw Massacre)などホラー映画をよく見ていた影響です。日本に来て初めて撮ったのは『Dekada ng mga Pinoy sa Japan』(編集訳:日本在住フィリピン人の数十年)という作品。フィリピン人エンターテイナーがどうして日本に来ることになったのか、現在どんな暮らしをしているのかを追いました。

 私は映画を専門に学んだことはなく、マニラのファーイースタン大学ではマスコミュニケーションを専攻しました。これまで英語教師、不動産エージェント、ダンス振付師、カスタマーサービス・コンサルタントなどを経験しましたが、今は映画監督と事業に専念しています。

 

久留米は第2の故郷。人も場所も食べ物も好き

 

―好きな映画や影響をうけた監督は?

 

 好きな映画は 『インターステラー』『インシディアス』『きみがぼくを見つけた日』(The Time Traveler’s Wife)『ハロー、ラブ、グッドバイ』。 敬愛する監督は、ハリウッド映画ではジェームズ・ワン、スティーブン・スピルバーグ、ティム・バートン、クリストファー・ノーラン。
 フィリピン人監督ではブリランテ・メンドーサ(『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』(Kinatay)で2009年カンヌ国際映画祭監督賞受賞)、ポール・ソリアーノ、オリビア・ラマサン、キャシー・ガルシア・モリーナ。

 

―久留米で暮らすことになったきっかけは?

 

 母がエンターテイナーとして久留米で働いていて、私はラグナ州サンタロサから2009年に3人の弟といっしょに来ました。それ以来、久留米が第2の故郷です。

 

―久留米のどんなところが好きですか? 

 

 フィリピン人にとって暮らしやすい街なんです。人がやさしくてフレンドリー。久留米市は市内に住む外国人をとても親身なって支援してくれています。
 今回の映画撮影の時も久留米観光コンベンション国際交流協会が、観光地でのロケーション撮影などに協力してくれました。それに久留米は食べ物もおいしい。特にとんこつラーメンが大好きです。また、九州の中心地でもあるので、どこへ行くにも便利です。
 これまで、日本のいろんなところに行きました。東京、大阪、京都、長崎、大分、熊本・・・・・・。日本には息をのむほど美しい景色のところがあるので、いつか映画を撮ってみたいです。

 

 

―これからの目標は?

 

 いろいろ異なるジャンルの映画をもっと撮りたい。映画を監督するのが本当に好きなんですよ。映画を通じて、さまざまな物語をより多くの人に伝えていきたいと思っています。

 

 

『久留米…愛を探す。Kurume….Search for Love 』 あらすじ

 

 日本で出会ったフィリピン人男性と女性のラブストーリー。ビジネスに成功しながらも人生に何かが欠けていると思い悩むクラルは久留米に行き、フィリピン人女性のリナに出会う。彼女はフィリピンにいる家族のために、いくつもの仕事を掛け持ち、休みなく働いていた。久留米という街、そしてリナに惹(ひ)かれていくクラル。そんなある日、リナの家族に災難が降りかかる。リナと家族はどうなるのか。そしてクラルとリナの恋の行方は……。日本語字幕。上映時間90分。
監督:James Centurion 製作: Mariane Entertainment Production