【ローカルフード再発見】クリスピー・パタ Crispy Pata

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2024年4月8日

 

元俳優が少年時代に発明
レチョンのライバル?

 

 

 

 フィリピンに豚肉を使った料理は数あれど、その中で豚の丸焼きレチョン・バボイとともにツートップといえるのが、このクリスピー・パタである。日本語で言えば豚足の丸揚げ。揚げる前に、豚肉がやわらかくなるまでスパイスといっしょにゆでるのがミソだ。ドイツ料理のシュバインハクセに似ているが、シュバインハクセは豚の足をローストするのに対し、クリスピー・パタは揚げるという違いがある。

 

 

 クリスピー・パタはパリパリッとクリスピーな外皮の食感と、やわらかくジューシーな肉の味わいを楽しめる。そのままでもいいが、小皿に入って出てくる醤油や酢にチリが入ったサウサワン(ディップソース)を付けて食べると塩辛、旨味、ピリ辛が加わっていっそう味が引き立つ。

 

 

 「パタ」はスペイン語で足の意味。クリスピーという英語とスペイン語の組み合わせからなる名前だと思っていたら、辞書で調べると「パタ」は英語でも動物の足という意味があるらしい。

 

 

 

 クリスピー・パタは、発明した人物がはっきりしている。1950年代、マニラ首都圏カロオカン市にバリオ・フィエスタ(Barrio Fiesta)というレストランがあり、そのオーナーの息子ロッド・オンパウコ氏が、レチョンの店で不要になった豚足を揚げてメニューに加えたところ、人気メニューとなったという話がある。別説としてはロッド・オンパウコ氏が友達に料理をつくって頻繁にふるまっていたところ、レストランオーナーの母親が豚足を使うように言い、ロッド氏がつくったクリスピー・パタが評判になった、という話もある。

 

 

 さらに、3番目の説も。英字紙「フィリピン・スター」電子版(2017年7月19日付)によると、ロッド・オンパウコ氏が15歳の時、通学時にレチョンの店で豚足を12ペソで買い、帰宅してからいろいろな揚げ方を試した。そして、できたクリスピー・パタを家族や友達にふるまった。1960年代初め、17歳の時にはケソン市にレストラン「バリオ・フィエスタ」を開店するや、クリスピー・パタはたちまち人気メニューになったという話。

 

 

 なお、ロッド・オンパウコ氏はロッド・エバンスという芸名でアクション俳優として活躍した経歴を持つ。クリスピー・パタについては、ロッド・オンパウコ氏本人が語っているので、3番目の説が信憑性が高いと思うのだが……。元俳優ゆえに話は脚色されているのだろうか?(T)

 

 

 

(初出まにら新聞2024年1月4日号)

 

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