豚肉高騰の中、レチョンを買うフィリピン人

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2021年2月1日

 最近、台風やアフリカ豚熱の影響で豚肉の価格が高騰しているというニュースを見る。私は一人暮らしなので、スーパーで豚肉のスライスを200グラム買っても100ペソくらい。なので、あまり豚肉が高くなっているという実感がない。だが、大量に豚肉を買うフィリピン人にとってはやはり深刻な問題なのだろう。

 

 

 1月下旬、ルソン地方の北の方の州に住むフィリピン人の友人から連絡があり、お母さんの誕生日に子豚の丸焼き、レチョンバブイを買いたいのだが、値段が高くて買えないという。半年前の自分の誕生日の時には4,000ペソから5,000ペソもあれば20人前はゆうにあるレチョンバブイ1頭を買えたが、今は値段が2倍、1万ペソ前後に跳ね上がっていると嘆く。通常はキロ単位で切り身を買うこともできるが、店によると、今は仕入れる豚肉が少ないので1頭丸ごとのみの注文を受け付けているのだとか。

 

 

 友人は、いかにお母さんを愛しているかを切々と私に話し、60歳の誕生日にはレチョンバブイを買ってあげたいと思い、昨年約束したのだという。私が、お母様は昨年の約束を覚えていらっしゃるだろうかと言うと、友人は「母は約束を覚えていて、楽しみにしているに違いない。その約束を守れなかったらお母さんはさぞ悲しむだろう。約束を破った娘をどう思うだろう」と反論する。私は、今の豚肉価格高騰はお母様もご存知のはずなので、別のものを買ってお祝したらどうか、1万ペソあればほかにもっといいものが買えるはずだと提案した。すると、フィリピンのお祝いの食卓ではレチョンバブイがいかに大切なものなのかを私に説教した後、「自分も兄弟もお金を出して集めたが、どうしても足りない。少し助けてもらえないだろうか」と本題を切り出してきた。

レチョンバブイはまず、クリスピーな皮から食べる。

 

 お目にかかったこともない母上のためのレチョンバブイを買うために、なぜ私がお金を出す必要があるのかと思っていたら、向こうは3歳だか4歳の甥や姪を動員して画面の前に立たせ、レチョンバブイを食べたいと言わせてきた。結局こちらが根負けし、ではお母様の還暦のお祝いに少しばかりの気持ちを送りますと申し出るやいなや、銀行の口座番号を送ってきた。気分はフィリピンパブのCCA嬢に貢ぐ日本人男性である。

まさに丸焼き。

 

 翌日、写真が送られてきた。家族6人で1週間食べ続けることができそうなレチョンバブイだが、誕生日パーティーがあったその日1日で食べ尽くしたという。近所にもパンシットなどとともにおすそわけしたとのこと。いったい何軒に配ったのだろう。家族のために残しておいて、数日かけて楽しめばいいものをと思ってしまう考えは、フィリピンでは心が貧しいと思われてしまうようだ。私は1万ペソの豚が1日で消えるのはコスパが悪すぎてありえないと思ってしまうのだけれど。一方で、レチョンバブイを前にうれしそうなお母様の写真を見ると、若干ではあるが、豚の耳くらいはお役に立てたかなとも思った。

 

 私はまだレチョンバブイを丸ごと目の前に置いて食べたことがない。次の私の誕生日にはぜひ食べてみたい。私がいかにレチョンバブイを食べてみたいかを訴えて頼めば、この友人は資金援助してくれるだろうか。(W)