ピアスを求めて三千里

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2021年12月13日

旅の思い出を耳たぶに

 

 

 「1日のうち至福の時は?」と聞かれて「外出前にピアスを選ぶ時間」と答えたことがあるほどに、私にとってピアスは気分を盛り上げてくれるお守りのようなアイテムだ。また、海外旅行先から必ず絵はがきを出す人がいるように、私の旅先でのマイルールは「物語のあるピアスを集めること」である。

 

 民芸品市場や露店のような場所で、心掴まれたハンドメイドピアスを、作った人から直接買う。私に似合う色や形を選んでもらったり、そのピアスに込められた思いを聞いて少しお話ししたり、伝統手芸について教えてもらったり。言葉が通じない時はジェスチャーで。私の思い出が加わって、一つ一つがアクセサリー以上の大切なものになる。

 

 カンボジアで迎えた20歳の誕生日、一緒に世界を旅した友達と色違いで買ったアジアンテイストのピアス、イスラエルで紛争経験を話してくれたユダヤ人のおじいさんから複雑な気持ちで買ったピアス。キューバの民芸品市場で陽気なおじさんから買った貝殻のピアス。真っ青な海と空に囲まれたギリシャ・クレタ島で、その輝く青色にひとめぼれしたワンポイントピアスは、今も出勤時によく着けている。また、以前付き合っていた人に「そのエキゾチックなでかいピアス、恥ずかしいから外して」と言われて喧嘩になり、それを引き金に終焉(しゅうえん)を迎える原因となったピアスもあった。 

 

 学生には厳しい値段で泣く泣く諦めたものや、後で買おうと思って結局買えなかったものも含めて、思い出は尽きない。

 

 

東京で1人暮らしをしていた時、部屋の壁に観賞用としても飾っていた大きめのピアスたち

 

 

 

フィリピンでの葛藤

 

 

 今住んでいるフィリピンでももちろん、ピアスとの出会いを楽しみにしていた。しかし今年の5月、コロナ禍の真っただ中にフィリピンに来たため、7カ月が過ぎた今も残念ながらまだフィリピンのピアスは持っていない。徐々に移動制限も緩和されてきたので、ハンドメイドクラフトの店や市場へ行きたいと思っている。

 

 まずはマカティからバスで4〜6時間のルソン島北部バギオに行ってみたい。先住山岳民族の文化が根付き、伝統手工芸や民芸品が有名で、市場めぐりも楽しいと聞いた。もちろんバギオに限らず、各地方の文化を感じられるピアスを集めてみたい。ふらっと訪れた先で偶然出会うフィリピンのピアスが、私のコレクションに追加されるのを楽しみにしている。

 

 一方で、最近は店舗を持たずハンドメイドピアスをオンライン販売しているブランドや個人アカウントがたくさんある。コロナ禍では特に、実店舗のあるなしにかかわらず、オンラインでの購入が制作支援になることもある。直接メッセージでやりとりもできるし、ポチッと押せばマカティにいながらフィリピン各地のピアスが届くのは魅力的だ。とはいえ、コロナで「対面」が忌避されてきたからこそ、作った人と顔を合わせて「物語のあるピアス」を直接買いたいと思うのだ。
(文・写真:深田莉映/まにら新聞記者)

 

 

世界遺産「アドリア海の真珠」クロアチアのドブロブニク。この海のように透き通るガラスのピアスを露店で見つけて帰りに買おうと思っていたのに、港町が迷路のようで、とうとう同じ店に辿りつけなかった・・・

 
 

 

 

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