シシグを愛し、シシグを語る

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2021年8月23日

 

 

 マニラに住んで間もなく5年を向かえようとしている。コロナ禍の中で5周年を迎えることになろうとは…・・・。外食が制限されてから、気づくとフィリピン料理を食べる機会がすっかり減ってしまった。仕方なく自炊をするようになったので、フィリピン料理をつくることができず、食べる機会がないのだ。かといって立派な和食を自炊しているわけでもない。

 

 

 数年ほど前までは、仕事が終わってから夜遅くにリトル東京のバー、バンチャムでサンミゲルビールといっしょによくフィリピン料理を楽しんだ。昨年閉店してしまったバンチャムが懐かしい。鉄板にのって出てきたシシグが懐かしい。シシグほどビールに合う料理はないと個人的に思っている。

 

 

見るとビールが欲しくなるシシグ(イメージ写真)

 

 

 

 フィリピン観光省が1974年に「シシグの首都」と認定したパンパンガ州アンヘレスでシシグを食べるのは、私の目標の一つである。豚の耳、ほお肉、レバー、カラマンシ、玉ねぎ、チリを炒めて酢で味付けし、鉄板で出すというシシグを考案したのは、アンヘレスのルシア・クナナンさんという女性で、Aling Lucing Sisigという店が元祖であり本家らしい。シシグ・クイーンと称されたルシアさんは2008年、夫に刺殺された。享年80歳。

 

 

 フィリピンではシシグは家庭料理でもあり、つくるときは市場で豚の頭を買ってくる。家の冷蔵庫に豚の頭が鎮座しているのは気が引けるので、私はつくらない。先日パンガシナン州に住む友人がつくったシシグの写真を見たところ、見た目が別物。肉がぶつ切りで大きく、白い。どうしてこんなに白いのかと聞くと、マヨネーズと豚の脳みそだという。イロカノ地方のシシグなのだそうだ。脳みそは苦手である。ベトナムでヤギ鍋をよく食べに行ったのだが、ベトナム人の友人がヤギの脳みそを入れたがるので必死に制止したことを思い出す。

 

キニラウかと思ってしまうイロカノ風のシシグ

 

 

 シシグはポークをメインに、ビーフ、チキン、さらにダチョウ、カエルといった珍味のバージョンもあるようだ。イントラムロス地区にあるBambu Intramuros Art Bar and Restaurantで、ワニのシシグを食べたことがり、あっさりとした風味でとてもおいしかったのを覚えている。フィリピン料理を代表するシシグが、もっと国際的な知名度を獲得することを願う。シシグを愛する者として(脳みそ入りは除く)。(W)

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