先月5月6日から10日間にわたり、アートフェア・フィリピン2021(Art Fair Philippines 2021/以下AFP)がオンラインで行われました。AFPは3人の女性アートディレクターが創設し、2013年に第1回が開催されてから今年で9回目。昨年は参加61ギャラリーのうち、19ギャラリーがシンガポール、タイ、香港、台湾、日本など海外からでした。しかし、今年はオンラインのみとなったことから海外のギャラリーがほとんど参加を見合わせたため、参加は39にとどまりました。そんな中で日本からは「ギャラリーコグレ」と「コバヤシギャラリー」が出展していました。

 

 

 AFPは、2020年までは首都圏マカティ市の商業施設ランドマークの向かいThe Linkビルの駐車場で開催されていました。毎年約3万人が訪れ、期間中は会場へ向かうエレベーターに長蛇の列ができるほどの盛況ぶりでした。

 

フィリピン人のアーティスト、オカ・ヴィラミエル(Oca Villamiel)が2019年のAFPで発表した作品「Cheap Medicine」

 

 

アートフェアとは

 

 

 現代美術用語の解説によるとアートフェアとは次の通りです。「さまざまなアートギャラリーが一堂に集まり、作品を展示販売する催し。アート作品の売買を目的としつつ、アーティストにとっては新作発表の場、コレクターやギャラリストにとってはアート市場の動向を探る情報交換の場となる。また一般客にとっては新しい作品の鑑賞の場であり、多角的な側面を持つ。アートフェアはその国のアート市場の活性化や自国のアートを内外にアピールするだけでなく、他国の美術関係者との関係を構築する機会でもある」。

 

 

 現在、世界各地でアートフェアが行われ、最大のものはスイスのバーゼル市で開かれる「アート・バーゼル」です。アジアでは香港で行われる「アート・バーゼル香港」が規模、出展数、取引額ともに最大です。

 

 

若者のセルフィースポットに

 

 

 AFPはフィリピン国内では最大規模のアートフェアであり、ギャラリーの出展ほか、特別展やセミナーなどを通して、フィリピンの最新アートシーンの様子や気鋭の作家について知ることができます。またフィリピンの若者にとってはセルフィーのスポットとしても人気となっていて、アートになじみのない層が美術に触れるよい機会となり、鑑賞方法などのマナー面での教育になっているようにも思います。

 

アートフェアには若い入場者も多い。

 

 

 昨年、フィリピンの現代アートを牽引(けんいん)する10のギャラリーがAFPから離脱し、独自のアートフェアを始めたのですが、今年は行われいません。フェア出展料などに不満があったという話を耳にしました。AFP、そして新団体によるアートフェアが今後どうなるのか気になります。

 

 

 オンラインはいつでもどこででも見ることができるのがメリットですが、やはりアートは生で鑑賞するのが一番。来年のAFPはオンサイトで開催されることを願っています。

 

 

 

文:山形敦子 

美術作家。2012年よりマニラ在住。主にフィリピンにて個展を開催するなど活動している。

近年の主な展示に、2021年『attchiment | distance』2020年『Do you hear it?』Art Informal Gallery(マカティ市)、2019年Mervy Puebloとの二人展『Transcendental』カルチュラルセンター・オブ・ザ・フィリピン(パサイ市)など。

フィリピン以外での展示は、2017と2019年に群馬県中之条町で行われる中之条ビエンナーレに参加。2017年は札幌市のJRタワーホテル日航札幌で個展を開催。その他シンガポールやマレーシアでグループ展に出展している。

またミュージシャンと協業し、ライブで絵を描くライブペインティングも行う。

ウェブサイト:https://atsukoyamagata.com/