マニラ現地紙ナナメ読み 14

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2020年10月8日

立候補者は生死を問わず?

 

 選挙は厳正に行われなければならないものですが、フィリピンの選挙はいろいろ信じられないことが起こるようです。妙な候補者、投票日を無視して投票しようとするフライング有権者、そして、「あいつはインチキをして当選した」とわめく落選候補・・・・・・。また怖いことも起こります。例えば、候補者が暗殺されたり、なぜか死んだはずの有権者が投票することだってあるのです。あの世からやってきて投票するのではなく、遺言に託すのでもありません。2002年首都圏パシッグ市では5人の有権者が、死んだはずの有権者として不正に投票し、逮捕されました。2016年マニラ市エルミタでは、ある有権者が選挙人名簿の中に亡くなった夫の名前があるのを見つけました。一方、生存しているにも関わらず、名簿に名前がないために投票できない人もいました

 

 死んでいながら投票する有権者がいれば、死んでいながら立候補する人もいます。前回の大統領選挙では、元駐アラブ首長国連邦大使のロイ・セニャーレス候補は投票日の3カ月前に亡くなりましたが、投票の結果、2万2726票を獲得しました。

 

 ロイ候補の支援者が、亡くなっても忠実にその思いを果たしたと考えるべきなのか、それとも候補者をよく考えずに投票した人が2万人もいたのでしょうか。選挙の3カ月前に亡くなっていたのなら、選挙管理員会も対応できたと思うのですが。いったん立候補したら、生死を問わず投票の対象になるのがフィリピン流の選挙なのでしょうか。(10月1日・デイリートリビューン)

 

通販で買った箱の中身は

 

 オンライン授業が始まるにあたって、情報通信技術省は先生と生徒・学生向けにラップトップPCの望ましいスペックと備品を次のようにアドバイスしました。1.6ギガヘルツのスピード、8ギガバイトのメモリ、512GBのSATAハードディスクドライブ、13インチのディスプレイ、スピーカーとカメラ内蔵、ワイヤレス、ブルートゥース接続、キーボード、マウス、ヘッドセット。

 

 イロイロ市の大学3年生、アーサーさんは9月、このアドバイスに従って通販サイトで中国ブランドのラップトップを買うことにしました。値段は2万2,499ペソ。代金引換はできないとのことだったので、電子決済で支払いを済ませると、すぐに品物が家に到着。そして箱を受け取り、開けるとアーサーさんは自分の目を疑いました。

 キーボードもなければディスプレイもマウスもありません。入っていたのは、3つの石。PCと石は全く似ても似つかないものですが、あえて言うなら、どちらもハード(固い)。石にはもちろんハードディスクはありません。詐欺か、それとも配達人が途中でPCを盗んで入れ替えたか。アーサーさんは通販サイトに報告し、今調査の結果を待っています。

 

 フィリピンの通販で注文したはずのものと違う色やサイズが送られてきたというのは聞いたことがありますが、PCの代わりに石が入っていたとは驚きます。間違ってクリックして注文してしまったとも考えられません。これはやはり、詐欺師の 「だましてやろう」という確固たる”意思”が感じられます(お粗末さまでした・・・)。(10月4日・デイリートリビューン)

 

初代ミス・トランス・グローバルにフィリピン代表

 

 9月12日、オンラインで開催されたトランスジェンダー女性のコンテストででフィリピン代表のメラ・フランコ・ハビジャンさん(33歳)が、ミス・トランス・グローバルの栄冠に輝きました。
 第1回目の今大会には、メラさんのほかに4人のフィリピン人を含み、オーストラリア、カナダ、インド、米国、ウルグアイ、ガーナ、南アフリカ、スウェーデンなどから計18人が参加しました。主催者は、ミス・トランス・グローバルは美しい顔や完璧なボディを競うのではなく、知性と行動力を持ち、トランスジェンダーに対する偏見に立ち向かうためのイベントとしての意義を強調しています。

 

 

 メラさんは首都圏マリキナ市出身で、4人きょうだいの最年長。アテネオ・デ・マニラ大学でコミュニケーションを専攻し、優秀な成績で卒業。ABS-CBNで構成作家として勤務し、2016年にはLGBTQ+であることを公表してマリキナ市の評議員に立候補。選挙には破れましたが、現在LGBTQ+活動家、作家、俳優として活躍しています。

 

 メラさんは、デイリートリビューン紙のインタビューで自分の生い立ちについて次のように答えています。


「自分は違うと最初に感じたのは、4歳の時。ミス・ユニバースになるのが夢でした。子どもの頃は男の子と遊ぶよりも女の子とよく遊んでいましたし、幼稚園の頃に好きになったのは同じクラスの男の子です。両親とも教育者で敬虔なカトリック信者でしたので、私がLBGTQ+として生きていくことは難しいと感じていました。ゲイやトランスジェンダーの人たちがバクラと呼ばれて、からかわれるのを見ていました。自分を守る意味でも、学校では勉強を頑張りました」。

 

 LGBTQ+の子どもを持つ親、そしてLGBTQ+の子どもに伝えたいことを次のように語ります。「父は、私に『女性としてよりいい人間になれると思うなら、自分の思う通りの人生を生きなさい』と言ってくれたことで、私の生き方が決まりました。私にとって家は最も安心できる場所ですし、家族の愛情や私を受け入れてくれたことが励みになりました。LGBTQ+の子どもを持つ親には、子どもをしっかり認めてあげてほしい。LGBTQ+の子どもも自分の家があると思えば、どんなにいやなことがあっても安心できます。LGBTQ+の子どもには、まず世間は厳しいと伝えなくてはなりません。チャンスを与えられなかったり、奪われたりすることもあるでしょう。でも決してあきらめないこと。わかってほしいのは、きっとあなたの本当の姿をすばらしいと思ってくれる人がいるということです」。(9月28日・デイリートリビューン)

 

 

 

 

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