雑草が生い茂りホーム跡は住民の物干し場
Meycauayan PNR Station in Bulacan

マニラからマッカーサー・ハイウェイを北へ30分ほど行くと、右手の雑草が生い茂った中に旧国鉄のメイカワヤン駅がひっそりと残っていた(写真下)。一階はがっしりしたレンガ作りのまま、二階が木nostalgia27_01造の古い駅舎だ。役目を終えてすでに何十年も経っている。一階が待合室で二階が鉄道事務所だったか、などと想像してみる。かつての線路があったであろう場所には民家が立ち並び、当時の面影はまったくない。駅舎のホーム跡らしき場所は近隣住民の物干し場になっていた。使われていない駅舎にはなぜか常駐のガードマンがひとり。壊れた窓からレンガの内部の写真を撮ろうとしたら、「外からはいいが中の写真はとってはいけない」と注意を受けた。訪ねたのが日曜とあって駅舎の周りでは子どもたちがボール遊びをしたり、男たちがのんびりとビールを飲んだりチェスに興じていた。
フィリピンに最初に鉄道が登場したのは1892年(明治25年)。マニラのトゥトゥバン駅(現在のディビソリア市場付近)からパンガシナン州のダグパンを結ぶ北方線195キロが全通した。ただし初期のマニラとその北郊マラボンの路線は馬にひかれた客車だったという。
20世紀に入り、宗主国がスペインから米国に代わったが、鉄道の保線はないがしろにされた。フィリピンを米国の自動車産業の新市場とすべく鉄道の整備より道路の舗装に力を入れたからだ。今もブラカン州都へと向かう片道2車線の立派なハイウェイが、駅舎横を走っている。
◎ Navi Manila Vol.27 より