ゆく川の流れは絶えず、来る人も絶えず。パシッグリバー・エスプラネード

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2024年3月1日

首都圏マニラ市ビノンドの中華街ビノンドのパシッグ川沿いに、遊歩道「パシッグリバー・エスプラネード」(Pasig River Esplanade)がオープン。イントラムロスにも近く、マニラの歴史を伝えるエリアは、パシッグ川を中心にこれからますます注目を集めそうだ。

 

 

歴史を見つめてきた川

 

 

 古代から文明は川を中心に発展した。マニラでもその昔、スペイン人居住区イントラムロスや中華街ビノンドがパシッグ川の近くに築かれた。1990年代には汚染によって「生物学的に死んだ川」とも言われたが見事に復活(?)し、今、再びパシッグ川が注目されている。

 

 

 ロンドンのテムズ川、パリのセーヌ川、バンコクのチャオプラヤ川の河川開発にインスパイアされた政府主導の「パシッグ川都市開発計画」(The Pasig River Urban Development Project)によって、パシッグ川を交通輸送、観光、経済発展の重要拠点として開発が進められている。パシッグリバー・エスプラネードはその一環だ。

 

 

 LRT1号線カリエド駅(Carriedo)で降り、かつてフィリピンのウォール街と呼ばれたエスコルタ通り(Escolta)を抜け、ジョーンズ・ブリッジへ。橋のたもとにパシッグ川フェリーのエスコルタ・ターミナル、対岸にはマニラ中央郵便局がある。郵便局は昨年5月に火災に見舞われ、外壁が焼けて黒くなったまま放置されていたが、今はきれいに修復されている。この郵便局をめざしてジョーンズ・ブリッジを渡れば、パシッグリバー・エスプラネードにたどり着く。

 

 

サンセットと噴水と

 

 訪れた日、5時半ごろには遊歩道はすでに多くの人でにぎわっていた。スマホやドローンで撮影をする人、犬を散歩する人、思い思いに楽しむ夕暮れのひと時。周辺にはここぞとばかりにドリンクやスナックを売る屋台も出ている。

 

海道の釧路、バリ島と並んで世界3大夕日とされるマニラ湾のサンセットも遊歩道から見ることができる。

 川沿いに広がる全長500メートルの遊歩道の堤防には、フィリピンの民族舞踊パンダンゴ・サ・イラウを踊る女性と男性の像が建つ。マニラ湾に沈む夕日を望み、夕方6時頃になると堤防がライトアップされた。そして皆さんお待ちかねの噴水が吹き出す。さらに噴水がライトアップされて水が赤、青、緑、黄色などに照らし出される。警備員にどのくらい噴水とライトアップが続くのかと聞くと、暗いうちはずっと続くとのことだった。

カラフルにライトアップされる噴水。像の手の平のライトも光る

 

 このマニラ中央郵便局そばのエスプラネードのほかに、パシッグ川沿いに新しく8つの遊歩道が建設される予定だ。ただ、世界的に有名なテムズ川やセーヌ川を目指すにしては、パシッグ川が全長25kmなのに対し、テムズ川は340km、セーヌ川は777kmとスケールが違いすぎる。ちょうど東京の隅田川が27km、神田川が25kmなので、こちらを目標にしてはと思う。

 

 

 あと気になるのがパシッグ川という名前である。Pasigとは古いサンスクリット語で、1つのところから流れ込んできて別のところに流れる川という意味だそうだ。パシッグ川がラグナ湖から流れてきてマニラ湾に注ぐことから名付けられたと考えられるが、パシッグ・リバーと言うと川・川となってしまう。だからといってマニラ川というのも味気ないので、いつか新しい名前を募集してはいかがだろうか。(T)

 

 

(初出まにら新聞2024年2月10日号)

 

 

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