このフィリピン的乗り物

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2014年12月7日

ロロボート(Roll-on/Roll-off Ship) / バンカ(Bangka)

 フィリピンは島が多いため、国内の港間をたくさんの内航船が運航している。フェリーは「ロロボート(Roll-on/Roll-off Ship)」と呼ばれ、ルソン島のバタンガス港からミンドロ島へ行く近距離のものから、ビサヤ地方やミンダナオ島まで長距離航路を行く船もある。マニラからコレヒドール島へ行く水中翼船やセブに行く旅客船「2GO」など、輸送船の種類は多様である。フィリピン国内を航海する内航船は定員以上に積み込むこともあり、海難事故の原因のひとつになっている。波が高く揺れが激しくなる台風の時期などは船の利用は避けたほうが無難である。台風警報のシグナルNo.2が発令されると出港しないので、乗り継ぎの飛行機便などがある場合には十分な留意が必要だ。
 そのほか、「バンカ」と呼ばれる船内機つきのアウトリッガー(腕木)船もある。3人乗りの小型から50人くらい乗ることができる中型船まであるこのボートは、フィリピンではもっとも一般的。アイランドホッピングやダイビングで島に渡るときなどもこのアウトリッガー船を使うことが多い。「ランチャ」と呼ばれる20人ほど乗ることができるアウトリッガーがついてない小型船もある。バンカとランチャとの明確な区別は難しく、地方により呼び方が異なるようだ。

ジプニー(Jeepney)

 ジプニーまたはジープと呼ばれている日本の中古ジーゼルエンジンを積んだ組み立て自動車で、都市部でも田舎でもヒトとモノのいちばん重要な移動と輸送手段になっている。もっともフィリピン的な乗り物。戦後、アメリカ軍がフィリピンに残していった軍用ジープに荷台と屋根を取り付け、乗り物に改造したのがはじまりで、そこから「ジプニー」と呼ばれるようになった。飾り付けが派手で、ボディには風景やドライバーの娘の顔などがペイントされているので、「民衆の芸術品」などともてはやされる時期も過去にはあった。最近では機能性のみを重視したブリキ板むき出しの味気ないものが多い。頑丈なつくりで、地方に行けば屋根の上にまで人が乗り、荷物、豚や鶏、清涼飲料水など、生活に必要なものが何でも積み込まれる。ジーゼル車のため、黒煙を撒き散らして走り、大気汚染の原因となっている。「パラー(止めて)」と運転手に声をかければ、どこででも止まってくれる。マニラ首都圏の初乗りは8.5ペソ(21円)。どこででも止まるので首都圏では渋滞をつくっている。夜間のジプニー車内ではホールドアップが多発しているため、携帯電話やネックレス、財布などはカバンの奥にしまいこむこと。経由先と行き先はバスと同様、フロントガラスとボディに書かれているが慣れないと判別が難しい。料金の支払いは、「バーヤッド(払うよ)」と言って後ろの乗客から前の乗客へと手渡しして運転手に払う。ジプニーに乗れるようになったらかなりのフィリピン通。現地で働く日本人もこのジプニーを利用している人が多い。

トライシクル(Tricycle)

 中型オートバイに屋根付きサイドカーを取り付けた乗り物で、ジプニー発着場から自宅のある路地などに入っていくときに利用する。営業用のトライシクルは基本的に自治体に登録されており、路線も決まっているため、運行地域は一種の縄張りになっている。高級住宅地であるビレッジやグローバル・シティなどには乗り入れが禁止されている。短距離でも行ってくれるので乗り慣れたらとても便利だ。マニラ首都圏を走るトライシクルだと、通常、サイドカー内に3人、運転手の後ろに2人乗ることができる。これが地方に行くと、トライシクルにも土地ごとのバリエーションがある。ビサヤ地方では三輪車のように改造して10人くらい乗ることができるトライシクルもある。貸し切りや通常ルートから外れる場合は「スペシャル」と呼ばれ、運転手との交渉で料金を取り決める。この料金が結構高い。

ペディキャブ(Pedicab)

 トライシクルよりさらに小回りの利くサイドカー付き自転車。台風で道路が腰の辺りまで冠水したときなどは車もバイクもギブアップだが、このときぞばかりに登場するのが脚力で走るこのペディキャブだ。もちろん通常でも街中で走っているが、台風の時には値段が数倍に跳ね上がっていちばんの稼ぎ時になる。トライシクルやペディキャブのあるここフィリピンでは、日本人も長い間住んでいると次第に歩かなくなってしまう。

ハバル・ハバル(Habal-Habal)

 田舎道を走っているバイクタクシー。ホンダやヤマハなど、日本製バイクの荷台やガソリンタンクに横木を渡し、その上に左右にバランスよく人が座り、さらに荷台やガソリンタンクの上にもまたがって最高10人くらいまで乗せて走ることができる。遠くから見たら「人間ピラミッド」のようになっている。フィリピンの人たちの生活の知恵である。田舎に旅行するときなど日本人もこのハバル・ハバルに世話になることがある。国道から細い山間部の道に入るときにはこのバイクタクシーがバツグンの威力を発揮する。もちろんビサヤ地方やミンダナオ島の田舎に行けば国道でもこの人間ピラミッドを見かける。ハバル・ハバルは最高の燃料倹約型の乗り物と言える。日本製バイクの登場でフィリピンの田舎の生活は大変便利になった。なお、ガソリンスタンドがない田舎では、サリサリストア(雑貨店)でコーラの1リットルビンにガソリンを入れて売っている。

バン(Van)

 「バン」は国内の地方空港から街中に向かう路線を走っているハイエースなどのキャブオーバー型の車である。地方空港のほとんどは公共バスの乗り入れがなく、街中へ行くにはタクシーかこのバンになる。近い場合にはトライシクルも運行している。車内を改造して椅子列を増やし、最高19人まで乗ることができる。運転席には運転手入れて計3人、後部座席には4人がけ椅子4列で計16人が乗る。バス同様、スピードを出して走るのではらはらさせられる。空港に着いたら3人以上のときはタクシーを勧める。バンに乗るのと同じ料金になる。一人のときはこの「バン」を探そう。必ず空港の出口に留まっている。ちなみに料金は、ネグロス島のシライ空港からバコロド市内までは1人150ペソ(375円)。タクシーだと500ペソ(1,250円)かかる。
フィリピン国内の空港は市中へ向かうバスや電車などの公共交通機関が不備のため、早い時期での整備が望まれる。

編集: 「ナビ・マニラ」 Navi Manila

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